こんなところで、信用できるもんか。革は「俺もなにベラベラと…。敵か味方か分かんない大人(ヤツ)に」っと口にすれば、手にしていた劍神を手の中に収めていた。
あたしは歩きだそうとする革の袖を引っ張って、あの彼が告げた言葉を声にする。

「革、目の前にあるものを落ちついて、よく見て―――って」

その言葉に、はっとなれば革は顔を上げ管の重なる先に捜している人物が居たことに気付く。

「あ、コトハ!!…となぜか赤髪(バツ)!?」
「コトハ、よかったぁ――」

その姿に無事であることが分かれば、お互い顔を見合わせ「行くぞ、巳束」と、革が階段を下る。先を急ぐ革を追うように、あたしも階段を駆け下りた。
革も先程会った、男が告げた“全体からよく見てごらん”の言葉を思い出し記憶を頼りに、シャーペンを持ってノートに走らせた。

「さっきスラれた地図は確かこうで…俺たちが通ったのは……」
「革、ここの通路はここに繋がるんじゃ?」

横から覗きこみ、指で示せば「そっか!?まず、こっちだ」っと革はあたしの手を取りまた走り出した。


 * * * *


コトハは二人の少年と自己紹介をしていた。赤髪の頬にVの模様がある少年はカナテ。その彼を、兄ィと慕うのが弟分のギンチだった。
二人に「あの…私、アラタ様と巳束さんのところに…」と、告げるがギンチがお腹空いていないか?っと聞き、商店街に行ってくると言う。
その対応に「ギンチなにさ急に!」っと小声で聞けば「2人っきりでうまくやるっスよ!!」と、カナテに耳打ちをする。

コトハの話はお構いなしに、兄ィのお株を上げるため女の子が喜ぶものと交換をしに、ギンチは基地を出た。薄暗い狭い通路に一人降り立つ。
その手にある、指輪を握りしめて足を進めようとするが何者かにドオッと引っ張られてしまう。
そこに響くのはキン…っと銀の指輪が落ちた音だった。



「革、どうした?」

管と書き出したノートのページを睨めっこするかのように、革の足が止まった。「あぁ、この階層のはずなんだ」っと呟き、シャーペンをカチカチさせて。

「あらたぁ…」
「ん?巳束、小声でどうした?」

あたしの声に気付いたのか「いや、なんか凄い見られてるよ」っと、その声の先に革が視線を送ればじ―――っとシャーペンを見つめる男の人がいた。
折角だからと、二人の少年のことを聞けば「ああ、カナテとギンチな!」っと男が口にする。

「あいつらの隠れ家は誰も分かんねェよ。特に“赤鬼のカナテ”はキレたらホント怖え!何人半殺しにしたか…」
「そんなに、怖そうな感じはしなかったんだけどなぁー。だよね、革?」

隣で聞いていた革に声を掛けるが、なぜか顔は真っ赤になって目が大きくなり「コ、コ、コトハ」っと口にしている。
革の頭の中は、二人に服を剥がされてしまうよからぬことが浮かんでいた。「ちょ、今!?よからぬ想像してない」っと告げるが、あたしよりも先に「コトハ―――ッ!!」っと走り出してしまった。


ちょうどその頃。コトハと2人きりになったカナテは、コトハの言う“アラタ”の話に痺れを切らしていた。そしてギンチの戻りが遅いことに「様子を見てくる」っと言って、基地を後にしていた。


「革、また誰かと打つかっても知らないよ」


前を走る革に前方注意を呼び掛けてみるが、曲がり角で「あ、すいませ…」っと前から来た人と、打つかってしまっていた。あたしが、その姿に気付き「あ!?」と漏らせば、二人が「ん!!」っと叫んでいた。その相手がカナテだったのだ。

「…お前!!コトハはどこだ!?彼女返せ!!」
「…断るさ!あのコは俺が貰った!」
「なっ…!?」
「ちょーどいい、こないだの続きさ、女取り返したきゃ俺と戦え!」

ブンっと手にした槍を構えるカナテ。あたしは、その勢いに入り込む余地無しっと感じてしまう。
革は、あたしの手を取り即座に背中の後方へと追いやれば「少し、離れてろよ」っと口にする。その言葉にあたしは「うん」っと従った。

「アラタ様だか何様だか知らねーが、てめーは俺に言わせりゃ、ただの腰抜けさ!」

その言葉に「誰が、腰抜けよ」っと声にすれば「ば、巳束!危ねぇ!」と、革はあたしを抱えるようにその槍をかわした。
「避けてねえで、戦え腰抜け!!」とカナテがそのまま振りかざそうとすれば、あたしを庇うように劍神を出せば、ガキィ―――ンっと剣と槍が重なった。

「お前、いい加減にしろ!!」
「何カッコつけてるんのさ!!」

ガッと革が劍神で薙ぎ払うが、身のこなしの軽いカナテは簡単に避けてしまう。「コトハを返せ!!でなきゃ…、ホントに―――」っと口にすれば、キィーンと剣が交じ合う。
「“ホントに”どうすんのさ!!」っと、カナテは口にし「そんなボロ剣で俺に勝てるとでも―――」と告げると同時にガキンッと革に払い除けられてしまった。
ガランっと落ちた槍に「…っ!!」と皺を寄せ、顔を歪めれば「もういいだろ!コトハはどこだ!」っと、革に止められてしまう。

「…なんだよ、ムキになっちゃってさ…ホレてんのかよ?」
「そんなんじゃない!!」

カナテの言葉に思わず息を呑んでしまう。「……革?」っと声を掛けるが、聞こえていないようだ。

「あの子は、俺たちがこの世界に来たときから何度も助けてくれた、何度もはげましてくれた!
だから、今度は俺の番だ!!
彼女を含め、……護るって決めたんだ!!彼女を返せ!!」

その言葉にあたしも、カナテも何も言えなかった。その目は、真剣そのもの。
が!直後に、上から降ってきた何かにドサッとカナテが倒れてしまう。

「!?」

「なん…え?」っとその振ってきたものに視線を送れば、カナテと先程まで一緒だったギンチだった。ただ、その体は傷ついていた。

「…ギンチ!?」
「なんで?……ひどい、傷!!」





誰かの為に、告げる言葉

<<  >>
目次HOME


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -