体を支えるカナテに「ヘーキ、ヘーキかすり傷ス!足、踏み外して落ちちまった…」っと、ギンチは口にする。かすり傷であると告げるが、その言葉とは裏腹に痛々しい傷だった。

「誰に…誰に、やられた!?」
「う…」
「ねえ、どこか手当出来る場所に!!」

あたしの声に、コクッとカナテが頷けば、革に「勝負はあとさ!!」っと口にしギンチを抱きかかえようとする。
カナテに手を貸すように、ギンチの腕を取れば「巳束が、そんな気回すこと」っと言われてしまうが「状況を見なさい」っと革を押し切り、あたしは自分の肩に手を置くように伝えた。
ボソッと「ありがとう」っと言うギンチに「大丈夫」っと言ってみたが、貸した肩が傷のある方で一瞬顔を歪めてしまう。
換気扇のような四角い通気口を通り抜ければ、カナテは「ただいま―」っと告げれば、中から「どうしたの2人共!」っと声がする。あたしたちは二人に続いてひょいっと顔出せば、捜していたコトハがそこに居た。


「アラタ様と、巳束さん!」

「よかった、コトハ」っと告げれば、革も「コトハ!!」っと嬉しそうに声にする。

「もーっ、すっごく心配したんですよっ、無事でしたかっ!?」
「コトハこそ!こいつらにあんなことやそんなことされてないか!?」


コトハは革の言った言葉が分からず繰り返すが、革は「ドキ!!いや」っと顔を赤くする。「…変態、革っ」と呟けば「いや、えっと!巳束、あの、っ」と、慌てるように口にした。
「コトハ、革は放っといていいから」っと告げ、ギンチの手当てをお願いした。傷に手の平をかざす、コトハ。
「大丈夫、これくらいなら采女の力で治せるよ」っと言って。ギンチは安心したのか、ケガの経緯を説明した。

ギンチは「俺らの抜け道にあいつらがいるなんて…」っと告げれば、前にケンカしたときにカナテに酷く負けた者たちが、ずっと恨んでいるとのことだった。そして、大切な指輪も取られてしまったことを伝えた。

「待ってろ!!俺が仇取ってきてやるさ!!指輪も取り返してくっからさ!!」
「兄ィ」

カナテはそう口にすれば、基地を後にする。コトハが「カナテさんて、あなたのこと大切なのね」っと告げれば、俺らは同じ盗賊団で「いつも兄ィが護ってくれて」っと、ギンチが言った。
ただ、盗賊団がヤバくなったとき分からない罪を自分らが被せられたと。
「家族は?」っと革が聞けば「旅の途中で襲われて、俺だけさらわれたからよく分かんない。俺に残ったのは母ちゃんの指輪だけ―――」っと口にする。


「カナテが家族なんだね」っと頭を撫でるようあたしが言えば、兄ィとは一心同体「いつか、一緒にここからでるんだ!!」っと口にした。


楽になったス!っと告げるギンチは「あともう一つお願い、この姉ちゃんの肩も見て欲しいス!」っと指をさされたのは、革の隣に居たあたしだった。
その言葉に「え?何言ってるの?」っと、言ってみるが「俺に肩を貸してくれたとき酷く痛がっていたス、なのに申し訳ないス」とギンチがあたしに謝るが、手の平をブンブンっとさせ無い無いっと口にする。
革に「巳束、お前!上着脱げっ」と首根っこを掴むように上着を掴まれれば、肩が見えてしまった。肩に巻かれたハンカチが少し血の色で滲んでいた。


「変態、革!大したことない、傷じゃないのに」
「巳束さん、ひょっとしてこの傷は…あのとき私を庇って」


申し訳なさそうに、言うコトハに「全然大丈夫!気にしないで」っと「ね!」と笑って見せるがコトハは俯いたままだ。革は、自分の拳を強く握りしめたまま、何も言ってくれない。
「治します!私、治しますから」っと、強い意志で言ってくれるので「お願いします」っと笑って告げた。革とギンチには後ろ向いてて貰い、コトハに傷を見せれば「ごめんなさい」っと彼女の涙が肩に落ちた。
あたしは、首を何度も横に振りコトハの采女の力を感じていた。温かくて、どこか懐かしい、そんな気持ちになった。


「なに、辛気臭い顔してんの?」

「巳束、もういいのか」

「うん、コトハのおかげだよ!ね、ギンチ!」


肩を回しながら「大丈夫」っと告げれば「見直したス!コトハちゃんは兄ィのことを、ミツカちゃんは俺のお、お、お嫁さんになるス!」っと、手を握られまさかの告白をされてしまう。

「えぇっと、…ん―っと」
「コラコラ―――ッ!!巳束、何悩んでだよ」
「え、いやぁーきっといい青年に「んな、考えるな!悩むな!行くぞ、巳束、コトハ」」

でも!このままでいいのかっと、口にしようっとするが「俺たち早く、ここから脱出して秘女王のところへ行かなきゃ!」と革が言う。
「“ガトヤ”を仕切ってる“ツツガ”は鞘だ。そいつを捜してどうにかしないと一生このままだ!」っと。あたしたちを連れて行こうとするが、ギンチは「待て待て!!」っと告げる。

「いや、姉ちゃんたちは待って。お前は行って!」
「正直だな、オイ」
「まぁまぁ、革落ちついてって」

革が、でもなっと言おうとするが“カラコロカラカラ”っと基地にぶら下がっていた玉飾りが鳴り響き始めると、ギンチの顔色が変わっていく。
揺れる玉。それは、僅かな振動も揺れて知らせてくれる。“審判の刻”が近いっと。兄ィを捜してくるっと言う。「“審判の刻”が!?」っと革が呟いた。

「革、あたしたちも行こう!心配だよ」
「そうです!カナテさん、捜しましょう!2人は私のこと助けてくれたんです!」
「…2人とも」

あたしとのコトハに押されるように、分かったっと革は首を縦に振った。






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