真夜中のキス

私の彼氏は、モデルである。

金髪の方耳ピアス、私が言うのもなんだが、ルックスはすごいと言っても良いほど良い。
昔から、いつも女子に囲まれまくっていて、作り笑顔ばっかり浮かべていた。

思い返すのは、海常高校で、私が初めてあいつに出会った…そう、海常高校男子バスケットボール部仮入部の日。
私は元々選手だった。将来も結構有望視されてて、夢はNBCの選手になること。
だった、っていうのは、中3の時に事故に遭って、膝を壊してしまったから。ミニバスはおいておいて、バスケットボールの公式戦は約一時間。私の身体は、そんな長時間の試合に出られなくなってしまったのだ。
力を抜いてやれば、できて一時間。私が本気を出したら、10分も持たないだろう、と医者に言われた。
悔しくて悔しくて、ボールを見るたびに私は涙を流した。けど、それでもバスケが嫌いになれなくて、大好きで。
マネージャーという、選手を支える道を選んだ。

そして、晴れてマネージャー1年目というときに……




__あいつに、出会ってしまった。


『嫌なンすよね、1、2年早く産まれただけで威張ってくる人。』

奴は、私の幼馴染みである幸ちゃんこと、2つ年上であるバスケ部主将、笠松幸夫に、そう言ったのである。
チームメイトからしたら、とんだ恐ろしいことだ。あの幸ちゃんに、そんな事を言うなんて。

けれど私は、幸ちゃんが恐いとかそういうのは全く気にせず、ただ怒りに任せて幸ちゃんを押しやると、あいつの頬をぶっ叩いた。

パシンッ

という乾いた音が、体育館に響いた。


『ふざけんな!!!!』
『なっ、!?』

確かそれが、私たちが初めて言葉を交わした瞬間だった。

それからというもの、私はあいつに付きまとわれ、"#名前#っち"なんて変なあだ名もつけられてしまった。

最初は、"ふざけた奴"、とか、"チャラ男"とか思っててだいっきらいだったけど、

…あいつは、誠凛高校との練習試合に負けてから、変わった。
否、元に戻った、の間違えかもしれない。誠凛高校のあいつの元チームメイトである黒子くんが、そう言っていた。蛇足で、

"あなたと出会ってから、彼は少し変わりましたよ。"

とも言われたけど。それは今も意味があまり解らない。"女子に初めてひっぱたかれたからかな…?"とかあの時は色々考えていたが、面倒くさくなったので、考えるのをやめた。

それから、IH、WC…と、沢山あいつといる内に、あいつの本当の姿を見ることができて、いつのまにか、あいつを目で追うようになってた。

WCでボロボロになりながらも頑張って、最後に思い切り…幸ちゃんや、先輩ともっとプレイしたかったって大泣きして…守りたいと思ってしまった。不覚にも、格好いいと、思ってしまった。



……で、前置きがすごく、長くなってしまったが、高校、大学を無事卒業し、私たちは今、同棲している。…んだけど………




『今日も仕事が押して、遅くなりそうッス(>_<)ごめん(T-T)#名前#っちは前に寝てて下さいッスm(__;)m』

「……っ涼太の馬鹿!!!!」

送られてきたメールを見て、私はスマホを枕に投げつけた。
ボフッという音と共に、スマホが布団に落ちる。

ここ最近は、ほぼ毎日こんな調子が続いている。ちなみに、今は夜の11:30。
涼太は最近、モデルの他に俳優としての仕事もしていて。
最初は、彼女が居るって断って断っていんだけど……一度だけ、という名目でドラマに出たところ、演技もうまいし格好いいしで売れてしまったのである。

そんなこんなで、結局俳優業も初めてしまい、最近家に帰ってくるのは、日にちが変わった頃。
顔を会わせるのは、朝とたまたま大学の授業が重なったときだけだ。
大学、バスケ、仕事……大学の授業(というか勉強)は元からだめだとしても、体力をすごく使うバスケとモデル・俳優業。両立なんて、大変なはずなのに……

「無理して癖に…ほんと馬鹿、」

本当は知ってる。
最近、あまり体調が良くないこと、
無理してること、
寝る前に、私の額にキスを落としてから隣で寝ること。

「………あーもー!!!とにかく腹立つ!!!!」

自分は、何もできないと言うのが、一番腹立たしい。

最後に触れ合ったのは、いつだっただろうか。…嗚呼、懐かしい。そして、"寂しい"という感情も芽生えてしまう。

「……あ、そういえば………」

私は、ふと思い付いた。我ながら良いアイディアである。
よし、と気合いをいれてから、私は寝る支度を始めたのだった。

*****

ガチャ

「ただいまッス〜」

夜中の、仕事が終わり家に帰宅する。小さな声でただいまと言うが、それに答えてくれる彼女は居ない。時計をみるともう1:45を指していた。

……ここ最近、俺はずっと仕事続きで、彼女に会うことが減っていた。同棲をしているのにも関わらず、会えるのは朝とたまたま大学の授業が重なったとき、そして、俺の仕事が早めに終わり、帰ってきたときだけだ。

彼女は寂しいなんて言わない。
昔から、彼女はいじっぱりだったから。いじっぱりなくせに、バスケに対してはマネージャーとしてすごか本気で、人もしても俺が、尊敬できて、そして何より、真っ直ぐで。
それでも、たまに脆くなったりして。そんな彼女を、俺は好きになった。

最初に会ったときは、ビンタされたっけなぁ…なんだか、懐かしい思い出が蘇ってくる。


真っ暗な廊下を進んでいき、荷物を置いて、風呂に入る。あったかいお風呂に入るのは、ここ一番の楽しみかもしれない。…あ、今の撤回するッス。

だって、一番の楽しみは………



ガチャ…

「スー…スー……」

可愛い顔を浮かべて、静かに寝息をたてる彼女。寝る前の、俺の幸せな時間。

「はぁ…いつになったら、また#名前#っちに触れれるッスかねぇ…」

なんて一人言が、真っ暗な部屋に浮かんでは消えた。
ああ、こんな可愛い寝顔を見てると、理性が崩れそうになる。
最後に触れ合ったのは、いつだっただろうか。ああ、この柔らかい唇にたくさん触れたい、抱き締めたい、愛を囁きたい………触れたい、

と思うが、理性がそれを押さえる。

今それをしてしまったら、俺は彼女から離れることはできないだろう、多分朝までは。
彼女に負担をかけてはいけない、巻き込んではいけない。

そんな思いから俺はいつも、寝る前に彼女の額にキスをする。触れるだけのキス、それなら彼女は嫌がらないだろう……多分ッスけど。


そんなこんなで。

「………、」

チュッ…と、いつも通りに額にキスをした。…その瞬間。


グイッ!!

「へっ!?」




突然、首に腕が絡まったと思ったら、#名前#っちの唇が、俺の唇に触れた。

「/////////!?!?」
「アハハッ!!驚いた//?」

彼女の肩を押して急いで離れると、彼女は顔を桃色に染めながらケタケタと笑っていた。

「な、な、な、な、////!?!?!?」
「バカ涼太、気付いてなかったの?私、いつも起きてたんだけど。」

おき……て、た?




え、



……え、



「いつも!?俺がいつもき…キス…することも、ッスか!?」
「うん。」

「う、う、うううう……………」
「りょ、涼太?」

全部バレてた……
なんという失態…というかなんかもう……

俺は、全力で赤くなった顔を手で隠した。(手がでかくて本当に良かった…)

ああああ恥ずかしいッス!!!!!

「…涼太、あのさ」
「…なんッスか…………」

弱々しい声で答えて彼女を見ると、彼女は少し怒ったような、悲しそうな顔をしていた。

「……ない、で…」
「へ?」
「だからっ!!!」

怒られる!殴られる!!そう思って身構えていると、ポスッという予想外の反応が帰ってきた。

「え、と…#名前#サン?」

俺の胸の中に身体を預けた彼女は、俺の服をギュウッと掴むと、赤い耳を隠せていないまま上目遣い&涙目線で、

「……無理…しないで………」

そう言った。

「#名前#っち……」





いつも、心配してくれたいたのだろか。

いつも、俺のことを待っていてくれていたのだろうか。


いつもいつも………



「…#名前#っち……ありがとう」


満面の笑みで彼女にチュッとキスをする。更に顔を赤くする彼女。

「あー…」
「ど、どうしたの…?」

「…ね、#名前#っち。明日の講義って何時からスか?」
「え、と…たしか、11時からだけど……」
「…じゃ、大丈夫ッスね。」
「へ……」


なんか、ちょっとテンションあがっちゃったんスよね。
明日は俺も仕事昼からだし…うん。


「もう、#名前#っち可愛すぎるから、我慢聞かないッス。」
「え、あの、?」

いつのまにか逆になった場所。下にいる彼女に再びキスをおとし……

「今日くらいは、俺に優しくしてくださいッスね?」
「は、え……」






時計はもう2:30を指しているけど、まだまだ、二人は寝れない…かもしれません。
















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