小説 | ナノ




君に会いたくて

※原作設定です。途中までキッド←ロー。







「ハァ…」





無意識のうちに溜息がこぼれ出る。もうこれで何回目だろうか?そんなことを考え、今日で十数回目の溜息をつく。



アイツの顔が離れない…。



アイツとは、先日麦わら屋が起こした天竜人との事件で出会った「ユースタス・"キャプテン"キッド」…ユースタス屋と俺は呼んでいる。

あの時、戦闘を心から楽しんでるような顔に、不覚にも一目惚れしてしまった。…まさか男に惚れるとは考えてもみなかった。けれど、好きになったもんはしょうがない。そう思い、そのことは開き直れた。

…問題は、アイツの海賊で俺も海賊、いわば敵同士でもあるのだ。それを思うと、クルーたちにも悪いと思うし……絶対、実らない恋だ。自覚している。



だけど…



「諦め、きれねぇよ…」



好きと気付いてしまった気持ちを、簡単に無視できるわけがない。自分の気持ちを知り、余計にアイツが頭から離れず最近は夜も眠れない。元から酷い隈は、さらに酷くなっている。

憂鬱な気分を晴らすため、俺は船を降り散歩に出た。ゆっくり、ゆっくりと森の中を歩いていく。木々の間から光が漏れ地面を照らし、風が頬を撫でるように吹き、空気は澄みきっている。気分は少し落ち着いてきた。

なんだか気分が良くなり、鼻歌を歌ってみる。普段なら絶対しないが、幸いここを歩いているのは俺一人だけ。



「〜〜♪」



近くにあった大きな木の根元に座り込み、背を木に預ける。帽子は脱ぎ、腹の上に置く。



…あぁ、何だか眠くなってきた。



「せめて…夢の中ではアイツに会えると良いな」

「誰に会いたいって?」



俺は独り言を言い、眼をゆっくりと閉じろうとしたが…そのあとに話しかけてきたやつの存在に驚き眠気が吹き飛んだ。



「ゆ、ユユユユユユースタス屋!?」

「ドモリ過ぎだ」



俺の反応が面白かったのか、ユースタス屋は肩を揺らしククッと喉で笑う。その笑顔…ズルイ。

ユースタス屋はゆっくりと俺の隣に座り、話しかけてきた。



「なぁ、トラファルガー。誰に会いたいんだ?」

「べ、別に誰だっていいだろ!」



あぁ、素直に言えない俺って…!こんなこと言ったって男の俺じゃ可愛くねぇよ!



そう心で自分自身に突っ込む。チラッとユースタス屋の顔を窺う。ユースタス屋は何だか寂しそうな…悲しそうな顔をしている。…何でそんな顔すんだよ。期待しちまうだろ。そんなことを考えてると、ユースタス屋は口を開く。赤い口紅を塗ったその口からとんでもない言葉が出てきた。



「俺は…夢の中でだって、現実でだって…お前に会いてぇけどな」

「ユースタ…ッ!」



ユースタス屋と名前を呼ぼうとしたら、いつの間にか目の前にユースタス屋の顔が近くなって、俺の視界はユースタス屋一色。そして、唇に柔らかい感触。…え、柔らかい?俺は脳味噌をフルに活動させ現状を把握した。



俺、ユースタス屋に……キスされてるッ!?



キャーとか思っていると、ユースタス屋の舌が口内に入ってきて俺の舌を絡めとる。それはまるで生き物のように動き、俺は恥ずかしさやら嬉しさやら驚きやらで顔が紅潮する。何度も何度も顔の角度を変え、しゃぶりつくように俺の唇を貪る。だんだん酸素が無くなってきて、ユースタス屋の胸を叩く。それに応じ、ユースタス屋はゆっくりと顔を離す。名残惜しく二人を繋ぐ銀色に光る糸が艶めかしい。



「トラファルガー、何で俺がここにいたか分かるか?」

「ふぇ?わ、かんない…」



さっきの情熱的なディープキスのせいで頭も口も回らない。…そういえば、何でここにユースタス屋が居るんだ?



「お前に会いたかったからだよ」



その時のユースタス屋の顔は今まで見た笑顔の中でも最も優しい笑顔だった。柔らかく眼を細め、顔を少し赤らめて。

俺は何がなんだかで顔を真っ赤にし戸惑った。



「え?え?つ、つまり…」

「まだ分かんねぇのかよ…」



そう言い、ユースタス屋は俺の肩を掴み自分のほうへと引き寄せ、腕の中へと誘う。俺はガタイの良いユースタス屋の中へスッポリと納まった。そしてユースタス屋は俺の耳へと顔を近づけ、囁く。



「俺はお前が好きだ…愛してる」



その言葉に勢いよく顔を上げユースタス屋の顔を凝視する。…今のって。



「ほ、んと?」

「あぁ、俺はいつだってお前のこと考えてっし、お前以外考えられなくて気づけばお前を探していた。…お前に会いたくて」

「お、れも…俺もユースタス屋のことが好きだ!だけど…俺男だし、それに敵船の船長だし…だから夢の中だけでもユースタス屋に会いたくて…!」

「俺たちは敵同士だし男同士だ。だけど、それがなんだ。好きになっちまったんだからしょーがねぇよな!」

「うん…うん…!!」



俺は嬉しさから涙が出てきて、ユースタス屋の胸に顔を押し付ける。そんな俺に、抱きしめる力を優しく強め、頭を撫でてくる。…そんなことされたら余計に涙が出ちまうだろ!



「好きだ…ロー」

「俺も好きだ…キッド」







全ては君に会いたくて。





+++END+++




初のキドロ作品です!
乙女なローさんが好き過ぎてたまりませぬ^q^



霧咲

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