小説 | ナノ
君への思い
遅い、あまりにも遅すぎる。
もうじき本格的な夏場がくるのを知らせるような、臨戦態勢に入った光で襲ってくる太陽の下、俺は公園のベンチでユースタス屋が来るのを待っていた。
俺たちの関係は所謂恋人って奴だ。告白は…俺から。出会いは去年のクリスマスにバイトをしているユースタス屋に俺が一目惚れ…って何を話しているんだ俺は!
とにかく、俺たちは恋人で、今日は久しぶりのデート。学校はお互い違う学校(俺は北高であいつは南高)で、休日もいつもお互いの用事でなかなか会えないから、今日久々に会えるのを楽しみにしていた。
なのに、なのに…!
なんで約束の時間から一時間たっても来ないんだよー!
俺、ただでさえ暑いの苦手なのに…早く来いよ、ユースタス屋…。
早く…会いたいな…。
そう思えど、ユースタス屋が来る気配は一向に無かった。
なんだよ、もう。ユースタス屋…俺のこともしかして…いや、それは…でも…。
「結局、俺ばっかが好きなだけなんだな…」
そうポツリと呟くと一気に虚しくなって、ただでさえ汗で体内の水分が出ていってるのに目からまたジワッと水分がにじみ出てくる。
ユースタス屋は、俺のこと遊びだったのかな…?
やっぱり俺なんかじゃ、男なんかじゃ嫌、なのかな。
ユースタス屋…。
「こんなに、好き、なのに」
そう小さな声で言うと同時に、目の前から一生懸命走ってくる赤いものが見えた。あれは…。
「悪ぃ、トラファルガー!」
涙で滲んだ視界には、全身汗でまみれて肩で息するユースタス屋の姿が。
「電車が途中で、動かなくなっちまって…!ハッ…、それで、隣町から、走ってきたんだけど…!」
「わ、分かったから!ちょっと喋るな!息が絶え絶えだぞ!俺、なんか飲みもん買ってくる!」
そうして俺は急いで近くの自販機で飲み物を買って、それをユースタス屋に渡した。
ユースタス屋はコーヒーの缶のプルタブを開け、男らしく一気に飲み干した。
「プハーッ生き返った!」と言うユースタス屋に、俺はホッとした。だが、それと同時に何でこんなに遅くなったんだ、と問い詰めたくなった。
「なぁ、電車が止まった時、何で連絡くれなかったんだ?」
「いや、そのー…」
俺の問いにユースタス屋は口をもごもごさせて「昨夜、充電し忘れて…」とポツリポツリと話しだした。
「公衆電話で連絡する手段もあったけど、急いでいかねぇとってしか頭に無くて…お前が待ってると思ったら、なんかこう…あぁー!なんて言うんだろうなこういうの!」
良い言葉が思い浮かばないらしく、頭をガシガシと掻き、そして一言。
「お前に早く会いたかったんだよ!」
なんだよ、それ…。
俺はお前に好かれてないって不安だったのに…そんな不安を一掃するような一言を放ちやがって…。
ユースタス屋のその一言で目からまた涙がこぼれおちた。それと同時にユースタス屋に抱きついた。
「と、トラファルガー?」
「俺、もしかしたらユースタス屋に飽きられたかもって…好かれてないって不安になった…俺、バカみたいじゃん…!」
「…ホント、大バカ者だなお前は」
「んだと!?」
ユースタス屋の胸から視線を上にあげると、ユースタス屋は優しく目を細めて微笑んでいた。
そして俺の鼻の頭にちゅっ、とキスをした。
「俺は、お前のことを好きってより、愛しているの域に入ってんだよ」
そんな一言に、俺はまた涙した。
君への思い
(鼻の上にキスって…!愛してるって…!)
(お、おい!何でまた泣いてんだ!?)
(嬉し泣きだよ!バーカ!!)
+++END+++
どうも、管理人の霧咲です!
今回、ツイッターの診断で「ベンチで、怒る相手に鼻の頭にキスをするキドロをかきましょう。」と出たので書いてみました!
実はその時、憧れの管理人さん!霧さんに斑目さんにリツイートをいただきましたのですよ…!!
興奮やらなんやらで鼻息荒くこの小説を書き上げました(笑)
自分的にはもうキドロが書けて大満足です!
ではここまで読んで頂き誠に有難うございました!!
霧咲
(2011.7.3)
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