小説 | ナノ




彼と男の一週間(終)








アイツが消えて、一ヶ月が経った。
季節は春から初夏に変わり、桜の木は緑の葉っぱで覆い尽くされている。
俺は以前と変わらず、適当に授業を受けて、サボって、この中庭に来て、桜の木で昼寝をする。
そしたら、また起きた時アイツが居るんじゃ…そんな風に最初は思っていた。
でも目が覚めると、やっぱりアイツはいない。



アイツは、いない…。



あそこで寝ていると、いつも同じ夢を見る。
アイツが俺の前で泣いた時の夢…。
アイツは、あの時なんで泣いてたんだろう。
なにが悲しかったのだろう。
目覚めればそんなことばかり考えていた。
だが答えはもう、聞けない。
アイツの声は、聞けない。




「ロー…」




いつもの場所で仰向けになり、アイツの名前をつぶやいて、俺は静かに目を閉じた。
今日もいつもと同じくあの夢を見るんだろう…。



案の定、夢のなかには背を向けて立っているアイツが居た。
また泣いてるんだろう、そう思い近付いて行くと、いつもの夢と何かが違った。
いつもと一緒、だけど、何か違う。
そんなことを考えていると、アイツは俺の方に振り返る。
そこで違いが分かった。



笑って、る…?
いつもの切ない泣き顔ではなく、幸せそうな笑顔だった。




『キッ…、…きて』

「ロー!」




俺に向かって何かを言っているが、テレビを砂嵐のような音がそれを邪魔する。




『…っち、』

「あ?聞こえねーよ!」




アイツの声をはっきり聞こうと近寄れば、アイツはすたすたとどこかへ歩き出す。
その後を俺は追う。



周りは黒一色。
黒以外は何も見えない。
歩き出してどれほどたったのだろうか、黒い空間の先から小さな光が見えてきた。




「おい、あれはなん…」




なんだ?と言おうとすればアイツが俺の口に人差し指を当て、いたずらを楽しんでいる子どものような笑顔でシーッとした。
そして俺の手を掴み、小さな光に走っていき…光に飲み込まれた。




「…っ!!」




勢い良く目を開くと、そこには変わらず眩しい輝きを放つ太陽と風で揺れる木の葉っぱ。
一体あの夢はなんだったんだろうか…?
アイツは、もう悲しんでないということだろうか。



俺はまだ、立ち直れていねぇのに。



ため息をひとつ零し、右に寝がえりをうとうとすると何かが動くのを感じた。
隣に誰かいる…誰だ?キラーか?いや、キラーは授業受けているだろうからそれはない…なら一体…?
俺は誰かを確かめようと思いきって顔を向けた。







「嘘、だろ…」

「ん、ん…」




そこには、消えたはずのアイツが居た。
なんで…一体どうなってんだ!?
頭ん中が混乱しながらも、俺はローを起こしにかかった。




「おい!ロー!!」

「ん〜…」

「起きろって!おい!」

「んだよ…るっさいなぁ」

「何がるっさいだ!!どういうことだよ!?」




この混乱の原因は眠そうに眼をこすりながらこう言ってきた。




「俺、死んでなかった」

「…ハ?」

「んじゃ、おやすー」

「いやいやいや!待て!待ってくれ頼むからッ!!」




死んだはずのアイツは死んでなかった発言をし、再び眠りにつこうとする。
いやいやいやいや、嘘だろ?俺の頭のキャパはもうパンク寸前だ。




「だーから!俺は死んでなかったの!」

「だーから!どうしてだって聞いてんだよ!」

「…意識不明でずっと寝てたんだよ」

「…へ、つまり」

「死んでなかったんだよ、最初から」




寝て、ただけ…?
日頃使ってない頭をフルに回転させ、頭の中で整理する。
最初っからコイツは死んでなかった…。
じゃああれは幽体離脱とか…?
やっと考えがまとまってきて、現状を把握した俺はとりあえず…




「おかえり、ロー…!」




ローを思いっきり強く抱きしめてこの一言を贈る。
一瞬驚いて動きが止まったローだが、俺の背中に手をまわして返事する。








「ただいま、キッド!」








彼と男の一週間はまだまだこれからも続く!
(大好きだ)
(愛してる)
((もう離れない…))



+++END+++



はい、やっと完結を迎えました「彼と男の一週間」!
あ、まだまだこれからも続くって書いてますけど、連載はこれで終了です!
これは”彼ら”だけの物語りということで、こう書かせてもらってます。
いや〜色々と説明不足な小説で申し訳ない(^^;)


つじつまが合わない部分が多々あると思います。いや、あります。絶対!←
そんなところはもう…霧咲はバカだからしょうがない、と思い許してください(おい)
以前のローさんが泣いてるシーンはなぜ泣いていたのかというと…私も分かりません!デヘッ☆←
いやね、これはもう読んでいる人の解釈にお任せいたします。
私的には色々なことが思い出せなくて悲しくて泣いたのかな?とか思ってます。
はい、書いた張本人ですけど!


今回のお話は前々から幽霊ローさんとキッドさんの切ない話が書きたいなーと思っていたのでもう満足感でいっぱいです!
いや、その分残念無念な感じはありますけどね!←


最後はバッドエンドにするかハッピーエンドにするか迷ったんですが、やはりハッピーエンド主義の私にバッドエンドは無理でした…orz
でも、ある意味これで良いんじゃないかなと思います。
うん、これで良いんだ…これで(遠い目)


では、長々と失礼しました!
ここまで読んで頂き誠に有難うございました!!




霧咲
(2011.5.28)

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