零れ話 | ナノ
逆ハー狙いVSパレット
純愛はと〜〜っても美人で可愛い、世界一のお姫様!
勉強はちょこーっと苦手だけど、少し欠点が有るくらいが男の子は好きでしょ?
ドジっ子でキュートな純愛に男子達は皆メロメロなのっ!

でも、周囲の男共は純愛のレベルに全然釣り合わなくて退屈しちゃう。
それに比べて、漫画やゲームのキャラ達はイケメンがたっくさん!
きっと純愛は間違ってこの世界に生まれてきたのね。だってこの世界は純愛に到底ふさわしくないんだもの。神様もうっかり屋さんだわ!

純愛が元居た世界に帰れますように。
そう毎日お祈りしてたら、目の前に神様が現れたの!
純愛をポケモンの世界に連れていってくれるんだって!
やったわ!純愛は強くて格好良いポケモンやトレーナーに愛されるのね!

しかも願いをみっつ叶えてくれるんだって!
これって夢小説でよくある定番のやつよね!解ってるじゃない!
勿論望んだ容姿と擬人化とポケモンの言葉が解る特典を付けてもらったわ。
さあ、いよいよ純愛の本当の愛され人生が始まるのよ!


◆◆


最初は驚いたわ。だってこの世界、擬人化したポケモン達の世界なの。
でも、みいんな格好良い!!冴えないゴミとは違う、純愛に似合う素敵な男子がたっくさん!微妙な女も居るけどぉ?あんなの純愛に比べれば大した事無いわね。
ちょっと想定とは違ったけど、これはこれで良いわ!

それに、倒れていた純愛を見つけて介抱してくれたっていうあの人!
ライムさんって言うんだけど、この町の中でもとびっきり格好良いの!
普段はきりっとしてるけど、仲間同士で居ると凄く綺麗に笑うの。
よく一緒にいるソラくんっていう子に微笑みかけてるのを偶然見掛けちゃった。
私も何時かきっとあの微笑みを向けられるようになるのね!

ライムさんとソラくんは同じチームで活動してて、目が覚めた時に自己紹介した。
そしたらソラくんって共感覚持ちらしくて、私が名乗った時に凄く驚いてたわ!
「こんなの見た事ないんだけど」って!早速気に入られちゃった!
こんな特殊能力持ってるなんて絶対漫画やゲームでいう主要キャラよね。
ちょっと人見知りみたいだけど絶対仲良くなってやるんだから!

チームには他にも居て、シオンさんは紳士的で甘い笑顔が素敵!
親切に町を案内してくれて、泊まるところまで教えてくれたの。
「これで一人でも大丈夫ですね」って言われてその日は別れたけど、純愛はもっと一緒に居たかったし、見掛けたらすぐに話し掛けに行く事にしたわ。
純愛の話にもずっと相槌を打ってくれるから、きっと一番好感度が高いわね!

ランくんはザ・年下系〜って感じの子。
素直すぎてちょっと反応がオーバー気味だけど、解りやすく照れ屋さん。
だって私が目を合わせようとすると、慌てて顔を逸らすのよ?
言うなれば可愛い後輩タイプね!ランくんも好感度は高めなんじゃないかしら?
今は恥ずかしいのか会うと逃げられちゃうけど、すぐ捕まえてあげるんだから!

後は…アサヒくんは子供だけど、将来性を鑑みれば悪くないわね。
子供に好かれている姿はポイントが高いから仲良くしておいて損はないわ。

ついでに何か余計なのが数人居るけど、構いやしないわ!
すぐにあいつらの事なんか放って、純愛に愛を囁きに来てくれるんだから!

だってそうでしょう、此処は私の、純愛の世界なんだから!


◆◆


「純愛ちゃん、どうしたの難しい顔して」
「ええっ、な、何でもないよお」

何よ何よ何よ!!あんたなんかどうでも良いのよ!!

目の前に居るのはムカつく女その一。
ライムさん達と同じチームにお情けで所属してる。
純愛を差し置いて本当生意気!純愛なんて基地の出入りも許されてないのに…
しかも何その目、ピンク?典型的な逆ハー狙いの使う色ね!趣味悪いわ!

何よりムカつくのは初対面の時!!
「えっ、あやめちゃんていうの?私もあやめって言うんだ!凄い偶然だね!」
なんて言っちゃって…純愛って名前が似合うのは純愛だけなのに!!
しかもこの女は皆に名前を呼んでもらってるのに、純愛は呼んでもらえない。
皆照れてるの?こんな奴の名前なんて呼ばなくて良いのに。

「ほら彩夢、ケーキ来たわよ」
「あっ本当だ!純愛ちゃん、此処のケーキすっごく美味しいんだよ!」
「そうなんだあ〜、純愛楽しみ!」

ムカつく女その二。
この女も同じチームで、よりにもよって純愛のライムさんに目を付けてる。
自分の立場が解ってないのね。全く相手にされてないのに、可哀想。
しかもこっちは髪の毛がピンク。もう絶対逆ハー狙いに違いないわ!
純愛の事は居ないみたいに無視するのも気に食わない。

このカフェだって格好良い男の子と来たかった。
でも純愛と同じ名前の女に誘われて、優しい純愛はそれに快く承諾したのよ。
他の皆は折角純愛が可愛く誘ってみても来ないって言うし…。

あんた達が邪魔する所為で、思った通りに愛されないのよ!
早く此処から抜け出して、純愛の王子様に会いに行きたい!


◆◆


「本ッ当に、意味が解らないんだけど、あれ」

空が吐き捨てるようにそう言った。

此処最近のパレットは空気がどんよりと重苦しい。
というのも、僕達全員、とある一人の女の子にずっと付け回されているのだ。
浅緋に対しては接触は比較的少ないけれど、それでも人懐っこく天真爛漫な浅緋があの人嫌い!と不貞腐れる程には機嫌を損ねている。

「よりにもよって何で一人称が自分の名前なの。ノイズが酷過ぎ。ついでに言えば真っ黒で視界も遮られるし、ぐっちゃぐちゃで頭割れそうなんだけど」
「そんなに酷いのか…?」
「最ッッ悪。酔いを通り越して純粋に不快感で吐きそう。うざい」
「空、何時になく荒れてるよね…」

空が普段見ている景色は、様々な音と色で溢れているらしい。
僕達に見えないそれは共感覚という…正確には神紅の力に触れた影響によるものでちょっと別物らしいんだけど、何か特殊な能力で見えているのだという。
空が僕達の名前に瞬時に意味を見出せるのもそれのお陰なんだって。

当然、例の女の子からも音と色は発している。
けれど空によると、彼女の名前は何度聞いてもノイズが掛かって聞き取れなくて、彩夢が同じ名前だって言った事で名前を認識したらしい。
でも名前の「音」はやっぱり解らないとも言っていた。こんな事は初めてだ。
そして彼女が話すと、極彩色の絵画に黒いインクをぶちまけているような、色々と台無しな光景が生まれるらしい。想像するだけで残念だし煩わしいと思う。

そんな訳で、例のあの子が来てから過剰に感覚を刺激されている空は、パレットの中でも一段とピリピリしているように見えた。

「皆さんには申し訳無いですね…まさか私も彼処までしつこく付け回してくるとは思ってもいなかったものですから…」
「紫苑は毎度俺達の代わりにあいつの相手をしてくれているだろう。感謝はすれど誰も責めたりなんかしないさ」
「貴様に励まされても何の足しにもならん…と言いたいところですがさすがの私も気が滅入っていますので、有難く受け取っておきます」
「うわ、紫苑が来夢にけーごつかってる!きもちわるい!」
「貴方は私を何だと思ってるんでしょうねえ」
「子供相手に本気で怒らないでよ!?」
「そんな事しませんよ来夢じゃあるまいし」
「おい」

わいわいと騒いでいると、足元の影が揺らいでひょこりと白い頭が覗いた。
翡翠はずっと影の中に隠れていて、唯一彼女には気付かれず被害を免れている。

「おれ、やっつける?」
「うーん…お尋ね者でもないのにそういうのって、探検隊として良いのかなって」
「でもおれ、あいつ嫌いだ。排除したい。今日は新月だから、とびっきりの悪夢を見せてやれるぞ。永遠の地獄を味わわせてやるのもまた一興だと俺は思うがな?」
「えっと…翡翠?今日記憶戻るのやけに早いね」
「ああ、まだ来ぬ宵闇が私に力を貸している。友に仇なす者には慈悲も無しと」
「おやおや、全くもって素晴らしいご提案ですね。私は異存ありませんよ」
「ぼくもー!」
「ん」

ああ、皆完全にスイッチ入っちゃったよ!
彩夢も居ないし、こうなったら止められる人なんて居ないじゃんか!
大事になる前に何とかしなきゃ、と頭をぐるぐる悩ませる。
とにかく何でも良いから被害を最小限に抑えなきゃ、後が酷い。

「だってだって、あの人、彩夢や朱華のわるくちばっかり言うんだもん!」
「へえ」
「いーたいほーだいだよ!ぶすとかぎゃくはーねらい?とかよくわかんないけど」
「へえ」
「うん、そっか。ありがとう浅緋。僕達で消そっか」

にこりと笑みを浮かべて浅緋の頭を撫でると、嬉しそうにはしゃぎだした。
紫苑が肩を竦めてやれやれと首を横に振っている。僕は何にも知らないよ?
唯一何も言わなかった来夢に視線を向けた。

「来夢はどうする?」
「ん、ああ、そうだな」

やけに静かだな、と思ったけど。そっか。


「ギリギリ殺さずにいられるかどうかが、問題だな…」


来夢が、珍しく本気で怒っている。

あーあ、僕達の中で、一番怒らせたら怖い人を怒らせちゃったね。





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中途半端に終わる。この後逆ハー狙いちゃんは酷い目にあいましたとさ。
ちなみに神紅(空君のストーカーしてるアルセウス)のミスで、本当は本家の世界に呼ぶ筈がこっちに来てしまったので、パレットによって処分された後、神様自らぐちゃぐちゃに断罪されてます。

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