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あの保健室での一件以来、御幸先輩がおかしい。いや、頭はもともとおかしいんだろうけど、いつもと違うおかしさ。

挨拶はしてくれるし、ちょいちょい話もするけど、すぐに立ち去ろうとする。そして、あれだけわたしに抱きついてきてきたのに、それが一切ない。あのときのキスのことも、うやむやなままだ。

なんだ、わたし何かしたっけ?

『あ、御幸先輩おはようございます』
「おーす」

ほら、こうしてすぐに去っていく。いつもならもう少し会話してくれるのに。 何か、嫌われることしたかな。

「なに落ち込んでんだよ?」
『倉持先輩…』
「おまえ最近元気なさすぎじゃね?フられたかー?ヒャハッ」
『フられ…たんですかね?告白してもないですけど』
「…まじでそっち系の悩みだったのかよ」
『すみません…』
「いやいーけど。どーせ御幸だろ?」
『…なんで分かるんですか』
「お前ら明らかに前より話してねーし」
『ですよねー…』
「お前から話しかければ?」
『話しかけようとすればすぐ行っちゃうんです』
「ふーん。あいつの考えてることよくわかんねー」
『…ですよね。倉持先輩くらい分かりやすかったらいいんですけど』
「テメ、馬鹿にしてんのか?」
『褒めてるんです』
「褒められた気がしねぇ」

倉持先輩に話を少しだけど聞いてもらえて、ちょっとだけすっきりした。 そのおかげで、御幸先輩に話しかける勇気まで湧いてきたってんだから倉持先輩すごい。

部活が終わったら御幸先輩は自主練してるから、それが終わるまで待ってよう。

『御幸先輩』

自主練が終わった御幸先輩に話しかける。さあ、どう来るか。

「おーなんだまだいたの?はやく帰れよー」

と言って寮の方に向かう先輩。逃がすか!

『ちょっとお話したいんですけどいいですか』
「んー?でも早く帰んないと遅くなるぜ?」

『なんで、わたしのこと避けるんですか』

話をはぐらかそうとするから、直球で言ってやった。今日という今日は、話をつけてやる。あんな一方的なキスは、曖昧にしたくない。

「…なんでって、なまえこそ、俺と話したくないだろ?」
『…は?』
「え、は?」
『いや、は?』

「『…………』」

「…ちょっと話整理しようぜ」

『そうですね。ちょっとわたしも分かりません』
「お前馬鹿だもんな」
『先輩よりはマシ』
「おい敬語」
『すみません』

「とりあえず、俺この前おまえに…あーキスしちまっただろ?」
『…そ、そうですね』
「好きでもないやつにキスされて、今までも無理やりいろいろされて、もう話したくもないだろうなーって」

『そんなの全然思ったことないです』

「だよなー…ってえ?」

『わたし嫌ならもっと嫌って言ってます』
『そんなことでわたしのこと避けてたんですか』
『………嫌われたかと思いました』

最初はなんだこいつって思ってたのに、だんだん近づいてくるうちに、その体温に安心していたわたしがいた。あの体温がないと、わたしはだめみたいだ。

「…泣くなって」
『…泣いてません』
「…素直じゃねーのな」

「…あーひさしぶり」
『…ぐすっ』
「ホラ、泣きやめ」
『…っ、だいたい、避けるならわたしの方なのに』
「…あー…なまえに嫌われたくなかったんだよ」
『っ、好きになっちゃったじゃないですか…』

「…よかった…」
「俺も好きだよ」
「ってなんでまた泣くんだよ」
『……嬉し泣きです……っ……』

「はっはっはっ。俺、相当愛されてんのな」

「てことでなまえちゃん、こっからは遠慮しねーからな?」
『…え?』

そのあと、本当に死ぬかと思うくらいキスされました。

『死ぬ…』
「はっはっは。慣れろ」
『手加減しろ』
「無理」

(大人しいとなんだか寂しいです)
(…気のせいでした!)
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