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風邪なんてひいてない。風邪なんてひいてない。

自分にそう言い聞かせている理由は、単純に喉の痛みと体のだるさがあるからだ。風邪なんかで大好きな部活を休みたくない。

「なまえちゃん具合悪そうだけど大丈夫?」
「春乃…わたしはもうだめみたいだよ」
「えっ!?そんなに具合悪いの!?」

「なになに?みょうじ死ぬの?」
「沢村ァ…わたしに死んで欲しいのか?え?」
「いやそこまで言ってねーし」

「具合悪いなら無理しない方がいいよ。保健室行こう?」
「春乃の優しさに涙が出そう」
「俺の時と態度違いすぎじゃね?」
「春乃と栄純を同じくくりで考えてないから」

優しい優しい春乃に付き添ってもらって、保健室に行く。

『失礼しまーす』
「あれ?先生いないみたいだね?」
『ほんとだ。勝手にベッド借りていいかな?』
「そうしなよ。寝てたら先生も戻ってくると思うし」
『春乃ありがと〜。授業始まるし戻って大丈夫だよ。先生にだけ言っといて』
「分かった。無理しないでね?」
『はーい』

春乃が保健室を出た後、ベッドにもぐりこむ。熱があるのかもしれない。部活でれないの嫌だなあ。御幸先輩に会えないのも嫌だなあ…。

『…のど…かわいた…』

そのまま意識が飛んで寝てしまったらしい。寝ている間に少し汗をかいたみたいで、気持ち悪い。

「あ、起きた」
寝て 『……御幸先輩!?』
「んな大声出すなって。具合わりぃんだろ?」
『なんでいるんですか』
「秘密。ホラ、のど乾いたんだろ?」

御幸先輩の手には、スポーツドリンク。喉が渇いているのは本当なので、ありがたくいただくことにする。

『授業はどうしたんですか?』
「今昼休み」
『先生は?』
「会議だってよ」

わたしがここに来たのが2時間目終わった後だったから、2時間くらい寝てたのか。

「熱計った?」
『まだです』
「はい計りますよー」
『自分でできます』

体温計を服の中に入れそうだったので、その手にあった体温計を奪って自分で入れる。

「チッ」
『舌打ち聞こえてます』

ピピピッ

『ん〜…37.8℃…』
「立派に熱あんな」
『部活…』
「今日は休みなさい」
『…はーい…』

「…なんかなまえ、熱あるからかいつもより覇気がない」
『あってたまりますか。ちょう辛いんですよこっちは』

「かわいい」

『……え、わっ』

全身に感じる熱。この体温にも、すっかり慣れてしまった。

「…あったけぇ」
『熱ありますから。うつりますよ』
「んーそれは困るけど、」

「…なまえにくっついてたい」

…うつるって言ってるのになかなか離れないしさっきより力強くなってるし。それに、なんだかいつもの先輩よりも弱々しい。

『…くるしいです』
「あーわり………っ……」

やっと離してくれたと思ってそのまま顔を見上げれば、つぎに感じたのは、

『……っ』

くちびるにあたたかいものが触れた感覚。

『…え?』
「……っワリ」
『……え?』
「…やっちまった」
『…やっちまったじゃないですよ』
「なまえがンな顔するのが悪い」
『どんな顔』
「かわいい顔」
『うざい』
「いやまじで。このまま襲うぞ」
『やめてください』

(食べちゃうぞが冗談に聞こえません)

わたしのこと、からかってるだけのくせに、付き合ってないって言ってるくせに、なんでこんなことするの。
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