▼ ▲ ▼

「お前、具合悪いだろ」
『…え?』

朝練の最中、そう話しかけてきたのは倉持だった。あれ、練習は…?

「休憩中」

わたしの心の声が聞こえたのか、何も言わなかったのに答えが返ってくる。

『全然元気だよ』
「どこがだよ。ンな真っ青な顔しやがって」

朝から少しだけフラフラするなあとは思っていた。だけど、マネの仕事に穴を開けるワケにはいかない。

『大丈夫だって』
「…動いてねぇで休んでろよ」
『大丈夫大丈夫』

いつもより少しだけフラフラするだけだ。いくらオフシーズンだからって、まだまだやらなきゃいけないことはいっぱいある。
そのとき、プツンと何かが切れる音がした。

「…なまえ」

大丈夫と言って倉持を振り切りその場を離れようとしたのに、いつもより低い声で名前を呼ばれたと思ったら、腕をぐいっと掴まれてしまってそれは叶わなかった。

「いい加減にしろよな」

壁にドンと背中をつけられて、目の間には倉持。倉持が腕を曲げて壁に寄りかかっているからとんでもなく距離が、近い。

『く、くらもち…』

倉持が怒っている。これはもう、何を言ってもダメなやつだ。諦めよう。

「体調、悪いよな?」
『…ハイ』

わたしがそう言うと、倉持は満足そうに笑ってわたしを解放した。

「熱はねぇんだろ?」
『うん。多分貧血…』
「保健室まだ開いてねぇだろうから俺の部屋で休んでろ」
『え。いいのかな…』
「他のマネには俺が言っとく」
『うん…』

そして連れてこられた5号室。今は増子さんが引退したから倉持と栄純の部屋だ。

『っぎゃ!』

前にいた倉持がいきなり振り返ったと思ったら腕をとられてそのままベッドに座らされた。

「朝練終わったら迎えくるわ」
『ま、待ってここ誰の…』
「俺の」
『…いいの?』
「…いいから貸してんだよ。寝てろ」

そう言って倉持は部屋を出て行った。
まさか倉持にバレるとはなあ…。たしかに何かとよく気づく人ではあるけど。
お言葉に甘えて少し休ませてもらおう。

潜り込んだ布団からは、倉持の匂いがした。

…あーあ、あとで幸子と唯にいろいろ聞かれるだろうなあ…。

▼▲▼

「倉持!なまえ知らない?」
「具合悪そうだったから休ませてる」
「あ、そうなの?どこで?」
「…俺の部屋」
「倉持…あんた」
「るせぇ何もしてねぇよ」
「逆に何もしてないの!?それでも男かよ!」
「梅本、お前こえーよ…」
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