▼ ▲ ▼

「…なまえ、なまえ!」
『ん…んん?』

世界史の時間に眠気がピークに達し、これはダメだと思って休み時間に少しだけ寝ていたとき、誰かの声によって現実に引き戻されてしまった。

「なまえそろそろ起きろ〜」
「次現国だぞ」

ああ、御幸と倉持か。最近席替えをして窓際から二列目、前から4番目の席をゲットしたら、隣には御幸がいた。休み時間になるとたまに倉持が来るから、また来てるんだな。

「御幸。ちょっといーかな…」

寝ぼけながら顔を上げたら、ナベちゃんたち3人がいた。隣のクラスではあるけど、滅多にこちらには来ないからよっぽどの用事なのだろうか。

「あ!なまえやっと起きた?」
『うん』

クラスメイトの友達から何か紙を手渡された。

「これ、修学旅行の班分けたやつだよ」
「御幸くんも」
「ほら倉持にも!」
「なんで俺は呼び捨てなんだよ!?」

「大会と日程カブるかもしれないんでしょ?」
「だから野球部だけまとめて固めてあるけど」

そう言われて見てみると、見事に野球部で固まっている。倉持も「これじゃ寮と変わんねーじゃん」なんて呟いている。

「行かないよおれたち。試合に負ける予定がねえ!」

そう言って御幸と倉持はもらった紙を返している。その返答に関してはわたしもそのつもりなんだけど、「な!」と御幸に言われたナベちゃんたちはちょっとだけ戸惑いながら頷いていた。それが少し、気になってしまった。

「そっか…残念だねせっかくクラスのみんなと仲良くなれるチャンスだったのに」
「るせ!悪いのは日程だろ俺達を行かす気ねーんだよ!」
『待ってわたしは仲良いよね!?』

そう言っている間に、「やっぱいいや」と言って去ってしまった3人に、疑問が浮かぶ。うーん、気になるなあ。…あとでナベちゃんにそれとなく聞いてみよう。

そう思っているのに、なかなかタイミングが掴めなくて話せずに数日が経ってしまった。

そんなとき、練習後の自由時間でナベちゃんが参考書を持って一人で立っている姿を見かけたので、今がチャンスと思って話しかけようとしたら、同じ考えをしている人がいた。

『御幸』
「ん?なまえか、まだ帰ってなかったのかよ」
『んー、ナベちゃんと話そうと思って。それより御幸もスコアブックなんか持ってどうしたの?』
「…ナベちゃんにお願いしようと思って」

御幸も、この前のことが気になっていたみたいだった。スコアブックはそのきっかけなんだろうな。たしかにこの前のナベちゃんがまとめてくれた帝東戦のデータはとても野手陣に好評だった。

『じゃあ、御幸に任せた』
「え…俺こういうのスゲー苦手なのに…」
『それは否定できない』
「…お前な」
『でも、なんとかしようとしてくれてるんでしょ?』
「まあ…」
『あ、でも何かあったら一人で全部抱えちゃダメだよ。倉持とかゾノとかもいるんだからね』

御幸が慣れないことをしようとしているのは、キャプテンとしての自覚があるから。ちゃんとチームのことを考えてくれているのが伝わってくる。

「…なまえは?」
『ん?』
「なまえはその中にいねぇの?」
『…わたしでいいならいいけど』
「なまえがいい」
『…え』

「倉持とかゾノに弱味見せたくねぇ」
『ああ…そういう…』

そういうことか。ちょっとだけドキッとしてしちゃったじゃないか。

「じゃ、いってくるわ」
『うん』

いつも本音を隠す御幸の本音が少し聞けた気がした。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -