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雨が少し弱まってきたところで試合は再開された。でも、今日はとことん天気に見放されているようで…うちが守備につくときには雨が一段と強くなる。そんな中で降谷くんが打撃でサインを見逃したり、ヒットを許し先制点を与えてしまったり…。
六回表、中断中にもずっとブルペンで準備をしていた栄純がマウンドに上がることになった。

ワンナウト二塁のこの場面を振り切り、その後続く二人の打者を打ち取ってベンチへ帰ってくる。

「うおーしおしおしおーしおしおし!おー!!」
「るせぇ!!ベンチで大声出すな!」

栄純がアウトコース主体でなんとか帝東打線を抑えてくれている。それは向こうの投手も同じで、一点が遠い。

試合はついに八回まで進み、ツーアウトから東条くんがヒットで出塁。打順は戻って一番から。倉持、小湊くんがそれぞれ出塁し満塁。次のバッターは、ゾノだ。

『ゾノ…』

なんとかファールで食らいつき、6球目。

「レフトライン際ーフェア!!」

走者一掃の逆転タイムリーを放ち、この回一挙3得点。監督に言われていた、あのスイング。

残念ながらゾノ自身は三塁でアウトになったが、大きな、大きな3点。

『ゾノ〜!』
「な、なんや!」
『やったね!』

帰ってきたゾノに手を差し出してハイタッチをした。ゾノに当たりが出てくればチームは一気に盛り上がる。それほど影響力のある人なんだ。
その後最終回をしっかりノリが打ち取り、無事初戦を突破することができた。

試合が終わる頃には、あの激しかった雨はすっかり止んでいた。

『うわぁ見事にドロドロ…』
「しゃあねぇだろ」

試合後、 ベンチに戻ってきた選手たちのユニフォームは見事に泥で汚れていた。あれだけのグラウンド状態でスライディングとかしてたから仕方ないことなんだけど…。

「ヒャハ、お前も泥だらけなるか?」
『遠慮しておきます』
「そこー!いちゃついてないでさっさと行きますよ!!」
「るせぇ沢村!」

何はともあれ青道高校、初戦突破だ。

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『お、キレイになってる』

試合が終わって学校に戻ってきたあと、記録をまとめなおしたり試合の片付けをしたりしてようやく帰宅しようとしたとき、泥だらけになっていた選手たちがお風呂から出てきていた。

「おー」
『…どちらさんで?』
「テメ…」

いつもはセットされている倉持の髪が重力に逆らわずに下りている。合宿のとき何度か見かけているけど、やっぱり見慣れない。

『うそうそ。倉持って意外と髪柔らかいんだね』

なんだかその髪を触ってみたくて手を伸ばす。思ったよりもずっと柔らかい。

「…お前はまた…」
『?なに』
「ハァ、まあいーけどよ」

「あー!またそこ!」
「チッ…うるせぇ奴が来た…」
『倉持…顔、顔』

せっかく髪を下ろしてていつもより雰囲気が柔らかくなってるのに顔面がとんでもないことになってますよ。

「るせぇぞ沢村!テメェさっき若菜にメールしてただろ!」
「なっなぜそれを…!」
『なになに栄純てほんとは若菜ちゃんと付き合ってるの?』
「んなっ…違いますよ!そういうお二人はどうなんスか!」

最近そういう風に見られるの多いなあ。そんなにわたしと倉持一緒にいるかな…。たしかにクラス一緒だから他の部員よりは一緒にいるかもしれないけど。

「倉持先輩、顔どーしたんスか!」
「…うるせぇ」
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