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決勝を終えて帰ってきたその日。
優勝して帰ってくると、誰もがそう信じていた。用意されていたたくさんのいつもより豪勢な料理。いつもなら一瞬でなくなるものだが、今日だけは違った。

それらにはほとんど手をつけず、3年生たちは泣き続けていた。もちろん、貴子さんも。

1、2年生のわたしたちも、そんな3年生の姿を見て堪え切れるはずもなく、涙を流した。

だけど、 先輩たちとはその重さが違う。
悔しい気持ちは同じ。だけど、わたしたちにはまだ来年がある。先輩たちに、来年はない。

だから同じように泣いてはいけない。
そう思うことしか、わたしたちにはできなかった。

そしてわたしたちには、2日間の休養が与えられた。

野球部に入ってから、2日間の休みなんて数えるくらいしかない。こんなに休みをもらってもどうしたらいいんだろうと思ってしまうくらいには、わたしの頭の中は青道野球部のことしかなかった。

やることはあるんだけど(勉強とか)、家だと何も手がつかなくて結局来てしまった青道グラウンド。 みんなの様子を見に行きながら、用具室の整理でもしようと思ってやって来た。

黙っていられなかった。だって、黙っていても始まらない。 もう、秋大に向けて準備をしている学校だってあるんだ。 だったら、わたしたちマネージャーだけでも、前を向いていよう。

学校について、室内練習場の方へ向かう。監督は休みに入る前、この2日間はしっかり休めと言った。なのに、聞こえてくるのはいつも通りの金属音。

『…もう』

自主練に励んでいたのはほとんどの2年生。前に進もうとしていたのは選手も同じだった。特に、これからこの部を背負う2年生たちは。

その姿をしばらく眺め、用具室に向かおうと振り返ると、いつもの顔がそこにあった。

『幸子』
「なまえも来てたの?」
『うん…って、唯もだ』

遠くから、唯がこちらへ走ってくるのが見える。

「あいつらもう練習始めてんだね」
『じっとしてられないんだよ』
「なまえも幸子も来てたんだねー!」
「オフの間にできることしとこーと思って」
「わたしもー!」
『…みんな考えることは同じだね』

いよいよ、わたしたちの代が始まる。今まで頼りきっていた先輩はもういない。

「そういえば…キャプテンまだ決まってないよね」
『たしかに…』

普通に考えれば、主力にいた2人、御幸か倉持なんだろうけど…。これからわたしたちの代を引っ張る存在は、誰になるのだろう。

「なまえは誰がいいと思うー?」
『…そうだね、わたしはー…』

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