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準々決勝から1日明けて、7月29日。
準決勝当日。今日は10時から試合なので集合も早い。
早めに学校につけば、何やら食堂から大きな笑い声が。少し気になったのでのぞいてみれば、
『…ま、増子さん…!』
増子さんの頭が…ツルツルになっていた。
「ヒャハハッ、あ、なまえ!見たかよ増子さんの頭!」
『ちょ、倉持…ふっ、だめだってそんな、っふ笑ったら…っ」
「なまえちゃん…笑い堪えられてないぞ」
『ま、増子さん…いや、よくお似合いで!』
増子さんのアタッチメントつけ忘れ事件もひと段落したところで、バスに乗り会場へ。
準決勝ともなると、観客も多くなる。わたしたち青道への声援も、たくさん聞こえてくる。
そして試合は、両校ともエースの先発により1、2回を0点のまま終えている。
しかし、試合が動いたのは3回裏。先取点をとったのは、仙泉学園だった。ツーアウトながらも、いまだランナー1、2塁。
『丹波さん!ツーアウト!』
「ツーアウトー!」
「三振!アウトー!」
このピンチを乗り越え、なんとか一点の失点でおえた。そして4回の青道の攻撃はキャプテンのツーベースヒットから、増子さんのバントが決まり、1アウト1、3塁。
そして次のバッターは、
「頼むぞ御幸ー!!」
「いいところ持ってけコノヤロー!」
チャンスにめっぽう強い、御幸だ。
なんとなく、あの送ってくれた日から意識してしまって、昨日からうまく話せてないんだけど…。
けど、この場面での御幸なら絶対に打ってくれる。
「あっ…勝負しません仙泉バッテリー。塁を埋めて満塁策を選択」
「マジか」
『この場面だと御幸とは勝負したくないよね…』
そのまま満塁になったものの、チャンスを生かしきれずに得点ならず。そのまま5回まで青道は得点できずにきたものの、丹波さんも0点に抑えてくれている。
そして試合は6回表。またもやキャプテンの一振りで1アウト2・3塁。増子さんのサードゴロで、3塁にいた小湊先輩が、ホームへ突っ込む。
『っ小湊先輩!』
「セーフ!!」
「いよっしゃぁぁー!!!」
『幸子やばい!』
「どうてーん!!」
そして続く御幸は、またもや勝負を避け、再び満塁。ここで、丹波さんに代わり、春市くんが代打に出るそうだ。
そして、
「逆転タイムリーツーベース!!」
一気に3点リードまで広げ、続く6回、いよいよ栄純の登板。ピンチにはなったものの、1点の失点で切り抜け、7回表にはさらに3点を追加し、ピッチャーはノリへ交代。
「沢村ちゃんと投げれてるじゃん」
『ね。すごいじゃん。よかったね〜春乃』
「ほんと…すごいです沢村くん」
恋する乙女だ。なんてかわいいんだ春乃。わたしもそうなりたかった。
そして試合は8-3で青道の勝利。3年ぶりに、決勝への切符を手に入れた。
『貴子さん、小湊先輩大丈夫ですかね?』
「そうよね…ホームにあれだけ強く突っ込んでたらどこか痛めてるかも…あとで遠回しに聞いてみるわ」
小湊先輩は、絶対に自分からは言わないだろうから。…あとで倉持にも相談してみよう。
「さ、次の試合があるから撤収するわよ!」
「はい!」
稲実と桜沢の試合が終われば、決勝の相手が決まる。
そう、あと、ひとつで、
(甲子園への道)