▼知ってるようで知らない

はじめまして。そしておはようございます。
俺はごく普通のサラリーマン…だった。 23歳の、会社にも馴染み、後輩指導も任されはじめた普通の、ふっつうのサラリーマンだった。 そう、だった。


「はず、なんだけど…」


目が覚めたら何故か高校生くらいに縮んでました。なんで?



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何時までも布団の中にいたって仕様がない。 思い立ったら即行動。 部屋に無造作に転がっていたスクールバッグや普段使いらしきボディバッグをひっくり返す。
財布の中からは高校卒業と同時に取った運転免許や、会社から配布されていた保険証の類いがキレイサッパリなくなっていた。
代わりに鞄から出てきた身分証は生徒手帳。 たった数年手にしていなかっただけだというのにとても懐かしく感じる。 やっぱり高校生だった。 高校の名前は一緒だ。 クラスもそのままだからタイムスリップとか? この証明写真も初々し……い?


「エッ誰これ」


慌てて洗面所にかけ込んだ。 部屋に鏡なんてないし。 バタバタと慌ただしい音をたてながら洗面台の鏡にかじりつく。


日本人らしく、ちょっと焦げ茶色かかってるかな〜程度の黒髪の地毛に、同じくらいの目の色だったはずなのに。
髪は黒ではある。 けどこれ地毛じゃないな? 黒染めする地毛ってそんな明るい茶色だったのか?
髪はまだいい。 地毛はともかくとして黒いしな、うん。 びーくーる、びーくーる。
問題は目だ。 水色ってほど鮮やかな感じではないけど薄めの青色で…。 灰色がかってるような色だ。 もちろんカラコンじゃない。 寝起きで目が痛くないからカラコンじゃない、はず。
えっ?ほんと誰?これ俺?おれなの?夢か?アッ夢か、なるほど…。


「…いたい」


思いきり頬をつねった。 めっちゃ痛かった。 つまり夢じゃない…?


「ほんとにどうなってんだよ…」


訳がわからない。 仕事して普通に寝た。 ただそれだけなのに。
生徒手帳の情報を見ただけだが、きっと経歴は俺のものだ。 だけど、歳も見た目もまるっきり違う。 自分のことのはずなのに。 まるで、なにも知らない他人みたいだ。

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