シロ





『パーティー?』
「うん。三日後にミルフィオーレ主催のね」
『なんで俺まで』






書類を渡しにドンボンゴレであるツナの執務室に行けば言い渡された内容がこれだった
ミルフィオーレと言えば元アルコバレーノであるユニと白蘭が率いるファミリーで、交友の深いボンゴレが招待されるのはわかる
それになぜ守護者でもない俺が呼ばれるのか





「うーん…オレもなんか気になって聞いたんだけどさ、はぐらかされたというか…。白蘭は「友人を招待して何が悪いの?」とは言ってたんだけど」
『本心は違う気がする?』
「そうなんだよね…。白蘭がロクなこと考えてないのはいつもの事なんだけど…」
『……まぁ断ったらそれはそれで面倒だから行くけど』
「ごめんね。オレも白蘭から目を離さないようにするし、何かあったら言って」
『Si』






ちなみにこのやり取りをしたのは三日前だ
つまり今日がそのパーティー当日である
ツナも気づかれない程度に気を配ってくれている
ボスにこんな気を使われるというのは少し申し訳なくも情けなくも思うが白蘭相手だ
力添えはいくらでも必要である



ツナに言われた日のうちに骸にも今回のことは話してある
骸自身も一応警戒しておくべきだとこういう場は好まないのに来てくれている
何もなければそれで良し
なるべく骸や、吸血鬼云々は知らなくても何かあるんじゃないかと思っているツナの近くか視界から外れないようにパーティーを楽しむ
白蘭が警戒すべき吸血鬼じゃなければユニや真6弔花との会話ももう少し弾んだというのに
小さくため息をつくと肩を叩かれる
振り返って顔を見れば警戒の大元である白蘭がグラスを片手に立っていた





「やあ、久しぶりだね△△クン。パーティーなのにため息なんかついちゃって楽しまなきゃ損だよ?」
『これは失礼、ドンミルフィオーレ』
「やだなぁ、そんな堅苦しいのはいいからさ。普通に話してよ。今日は友人としてキミを招待したんだから」
『…どういう風の吹き回しだよ、友人枠としてわざわざ呼ぶなんて』
「あはは、特に深い意味はないよ。ただ…△△クンに会いたかったから、じゃダメ?」






俺よりも背が高いというのにわざと覗き込むように上目を使ってくる白蘭は、本当に自分の魅力を最大限に引き出す術を熟知していると思う
かといってそれに惑わされるようなことはない
流石に五年以上の付き合いで、尚且つ白蘭の突拍子もない思いつきに巻き込まれ迷惑を被った回数は両手の指だけじゃ足りないほどだ
ツナに比べたらなんてことない数だろうが





『男に会いたいなんて言われても嬉しくない』
「ひっどいなぁ…流石の僕も傷つくよ」
『勝手に傷ついてればいいんじゃないか?』
「ホント△△クンは辛辣だな。というかボクに当たり強いよね」
『お前みたいなタイプは苦手なんだ』





苦虫を噛み潰したような顔をしてそう言っても白蘭はまた笑いだすだけだった
何がそんなに面白いのか
普通なら苦手だと言われたり、これほどまでに嫌そうな顔をされれば怯むか怒るかするというのに
相変わらず白蘭には普通の概念は通用しなさそうだ




「苦手、か…じゃあ骸クンはどうなの?」
『なんで骸が出てくるんだ』
「えー?だって飄々としてるところとかなかなかにボクと骸クンは共通点が多いと思うけど。………それでも骸クンとはよく一緒に居るよね」






骸の名前が出てきたことにも、白蘭が言った共通点が多いということにも首を傾げる





『確かに骸は飄々として見えるかもしれないけどだいぶわかりやすい。それに白蘭ほど性格ねじ曲がってない。一緒に居るのだってお互いに過ごしやすいから』
「ふぅん………骸クンのことよく見てるんだね」
『よく見てるというか、一緒に過ごしてたら自然と分かったに近い』





白蘭の雰囲気が若干変わったような気がする
内心警戒心を引き上げながら話を続ける
周りに視線を少し動かして骸やツナを確認しようとした
だが、それは目の前にいる白蘭に阻まれて出来なかった
計算なのか偶然なのか
白蘭の立ち位置は丁度俺とその二人の間に壁になるようになっている




動揺を勘付かれないようにグラスを回す
シャンパンがシュワシュワと音を立てながらゆっくり波打つのを見て心を落ち着かせる
吸血鬼だということで警戒しすぎなのかもしれないと考える余裕も出てきた
その余裕も白蘭の質問で一瞬で消えた





「……△△クンてさ、骸クンのこと好きなの?」
『は?』
「気づいてない?骸クンの話の時だけ目がさ、違うんだよね」
『違うって、何が』
「他の誰の時より優しいんだよ。愛しくて仕方がないっていうの?ずるいなぁ、骸クン。極上品の血だけじゃなくて愛情までもらっちゃって」






〈極上品〉という単語が白蘭の口から出た瞬間顔を上げてしまった
上げたとたんに視線は白蘭に捕らえられる
白蘭が何か行動を起こしたわけじゃない
ただ目を逸らせば自分の身が危ないと本能が告げる





「ああ、その様子だと骸クンから全部聞いたのかな?ふふ、警戒してても無駄。吸血鬼と人間じゃもとあるスペックが違いすぎるようなもんなんだから。
それにして本当に骸クンはずるい。吸血鬼だって明かしても怖がられることも避けられることもない。その上たっぷりの愛情まで注がれちゃって」





白蘭が一言喋る度に、呼吸がうまくできない
意識を保てていることが奇跡なくらい自分自身の身体機能が低下していくのがわかる
指先の感覚が、今自分が立てているのか、周りがどういう状況なのか
音も視界も白蘭以外は一切を遮断されたように認識することができない





「ボクと骸クン。条件はほとんど一緒なんだから、骸クンだけが△△クンを独り占めするなんて良くないよ」





一歩一歩、ゆっくりと白蘭が近づいてくる
話すのに適度に開いた距離が少しずつ狭まっていく
後退り適度な距離を保つこともできない
ただギリギリで繋いでいる意識を刈り取られないようにすることだけ
それももう限界に近い
どんなに聞かないようにしようとしても目の前にまでやってきた白蘭の紡ぐ言葉を阻止する術がない







「だから、ボクの所に堕ちておいで」






「ねぇ、△△」







ぷつりと切れた意識は真っ黒に塗りつぶされた

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