腐れ縁の彼は




「今まで黙っていましたが…僕は吸血鬼なんです。」







やっととれた休日に押し掛けてきたのは中学からの腐れ縁であり、今の職場の一応同僚である六道骸だった






いつものように来て早々に我が物顔でソファーにふんぞり返るのかと思えば真逆の反応
ソファーには座らずにカーペットの上で正座
尚且つそわそわして落ち着きがないように見えた
そして目の前に胡座をかいて座る俺に真剣な顔で言ったのが冒頭の言葉である







ここ最近の忙しさで睡眠不足だから空耳か聞き間違いだろ
さすがの骸でも吸血鬼だなんて非現実的なこと言い出すわけがない






『悪い、今なんて?』






「だから僕は吸血鬼なんです。」







聞き間違いでも空耳でもなかった
とうとう骸がおかしくなったのかと遠い目をしてしまう
俺の様子はお構い無しなのか、自分は吸血鬼だ宣言を皮切りに骸が語る







「今まで黙っていたことは謝ります。でも本当に我慢の限界なんです。
10年前まで復讐者に捕まり血を摂取していなかったのが原因なのか禁断症状が出る一歩手前なんですよ、今。
ボンゴレの任務で動くときに密かに適当な人間を見繕っていましたが…。」








このあとも長々と我慢の限界を訴える
途中から本気で意識が飛びそうになった
今日はエイプリルフールじゃないんだが
もうすぐ10月が終わるくらいだぞ
そんな訳のわからない状況でも話をうまく頭の中で整理していた俺はかなり頑張ったと思う







「なので△△の血を飲ませてください。」






『なにが“なので”なのかわからない。一旦落ち着けよ、今救護班に連絡するから。』







「精神的な病気とかそういうんじゃないんですって。本当に吸血鬼なんですよ。信じられないでしょうけど。」







つまりまとめるとこういうことらしい
骸は人体実験の影響とかでなく、元から吸血鬼に産まれた
復讐者に捕まっていた期間以外は適当に見繕って定期的に血を摂取していた
だが最近になって飲んでも飲んでも足りないらしい







『その結果なんで俺のところに…』






「ああ、△△は……何て言うんですかねぇ…。纏った匂いからして既に極上品なんですよ、僕らにとっては」






『極上品?』






「ええ、そりゃあもうこれ以上ないってくらいに」






思わず変な顔になってしまったのは仕方があるまい
職業こそは普通じゃないがそれなりに普通の人間なつもりだった
それが吸血鬼の極上品って…
……と、落ち着け。なに骸の言うこと信じているんだ
未確認生物を信じて驚くのは俺じゃなくて獄寺なのに






『…とりあえず頭が可笑しくなったんじゃないなら証拠ないのか』






信じるためには物的証拠が一番
眠気は何処かへ飛んだというのに信じがたいことのせいで鈍くなっている思考に叱咤する
骸の顔はまだ序ノ口だと伝えているから





もう少し意識を飛ばさないでくれ俺

[ 25/33 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -