ある日の朝





―――PiPiPiPi…






『ん…』





部屋にアラーム音が鳴り響く
もぞもぞと布団が動き、手探りで携帯を探す
煩く鳴っているアラームを切り、もう一度布団にもぐる







もぐりこんだ布団が、なんだかいつもより狭い気がする
そう思い腕を伸ばせば何かに当たる
抱き枕かと抱き寄せれば温かいが、抱き枕特有の柔らかさがない
まぁいいかと顔を埋めるとほんのりと香水の香りが鼻腔をくすぐる
どこかで嗅いだことのある香りのような…






『んん……?』







「クフフ、寝起きの△△は可愛らしいですね」






頭上から声がし頭を撫でられる
そこで首を傾げる
俺は普段抱き枕を使っていない
しかもその抱き枕だと思っていたものに頭を撫でられた?
埋めていた顔を上げ、声が聞こえた方を見る
寝起きでぼやけた視界に藍色が映る






『………………あ゛?』






「おや、目が覚めましたか」






………………………。






『ぅおわあぁぁあ!!?』






「グハァ!」





ベッドから飛び退き、とっさに隣に寝ていたものの腹あたりを蹴り飛ばす
吹っ飛びベッドから転げ落ちたそれは壁まで転がっていった





「くっ…流石にサッカーしてるだけあっていい蹴りですね…。いたた…」






『ななななんでお前がここにいるんだよ!どうやって入った!?
つかなんでサッカーやってんのも知ってるんだ!』






「僕にかかれば家に入るのも△△の情報を手に入れるのも容易いことです」






ドヤ顔をしている六道の頭を叩き時計を見る
時間は7時を少し過ぎたところ
普段より起きるのが遅くなってしまった
弁当の用意などを考えると急がなければ





『とりあえず部屋から出ろ』





「着替えなら手伝いますよ?」





『うるせぇ変態が。早く出ろよ』





なんとか部屋から六道を追い出し制服に着替える
ブレザーは式典の時にしか着ていない
ネクタイを緩く締め教科書類の収まった鞄を持ち部屋を出る
そこで違和感
部屋から追い出した六道がいなくなっていて、さらに何かの匂いがする
匂いを辿るとリビングで、首を傾げながらドアを開ける





「ああ来ましたね。もうすぐできるので顔洗ってきてください」




呆然としながらふらふらと洗面所に向かう





『なんであいつ我が物顔で料理してんだ…』





朝から頭が痛くなる
顔を洗っても全くもってすっきりした気がしない
ため息を一つつき、家を出た瞬間にダッシュだなと心に決めた
リビングに戻れば六道がテーブルに料理を並べている





「クフフ、ちょうどできましたよ。さぁどうぞ」





何も言わずに席に着き並べられた料理を見る
パンが中心の洋食の朝飯で、量が抑えられているところを見ると朝にあまり食べないのもばれているのか
ハムエッグを一口、恐る恐る口に入れる





『…美味い』




「クフフフ、口にあったようでなによりです。
お弁当も用意してあるので焦らなくて大丈夫ですよ」





…なんだこの尽くされようは
不法侵入やこの家の勝手を知り尽くしていることにはもう何も言うまい
それでもいささか腹が立つ
目の前でニコニコと笑みを浮かべている六道を軽く睨み付ければさらに笑みを深めるだけ






『ごちそうさま』





「お粗末様でした」






食器をかたしチラシ類に目を通す
安くなって必要なものをメモしていく
隣に視線を向けると六道も同じようにしていて不思議な気分だ
そろそろ学校に行くかと立ち上がれば六道も動く





「これ、お弁当です。それじゃあ行きましょうか」





『…一緒に行く気か』




「行先も同じなんですから当然でしょう?」





やっぱりそうなるのかとため息をつく
今日は朝から一段と疲れた
鞄を抱えなおし鍵をかけ、これで学校に行く準備は整った








スタートダッシュを切る5秒前
(『それじゃあお先に』「え、ちょ、△△!?」)

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