41…明陀宗 座主の秘密

燐や雪男が生まれる少し前…若き頃の達磨は身重で病みついてしまった妻や仲間が、日に日に弱っていくのを助けてやれずに追い詰められていた。

7年程前から謎の病に侵され続け、既に15人もの仲間が死んでいる。
そんな彼が出来るのは先祖代々、一日も怠ることなく続けてきた仏との対話…護摩を焚く事だけ…

明陀宗の務めを果たすことに固執する実父に言われるまま……だだ、無心に務めを果たし家族を仲間を守るのだと思い込んでいた。

そんな時、雪が降り積もる冬に突如として上空から現れたのは巨大な鳥の化け物と…マフラー1枚に団服のみという軽装の男が一人…

化け物にとどめをさした男は文句を口にしながら本尊である【降魔剣】を手に頂くと言った。
その男が燐と雪男の育ての親である藤本 獅郎なのだ。







ここまで読んだ雪男は驚きを隠せないでいる。
それは燐達も同じで汗が一滴頬を流れていく。


「まさか…降魔剣が明陀宗の本尊で、そこに父さんと接点があったなんて…」
「早く続きを読め!」
「は…はい」

嫌な予感がしてきたシュラは頭をガシガシと掻いている。
そんな時に大人しく聞いていた燐は達磨が自分に何を頼みたいのか知りたい…そして、何よりも続きを聞きたくて仕方なかった。

ソラはというと、自分の知らない若かりし頃の獅郎が少し荒々しい性格だったことが意外に感じている。

(前にシュラさんが獅郎さんのこと、冷酷な最強祓魔師って言ってましたね。……その時の獅郎さん、見てみたいです)

思わず小さく微笑んだ彼女はすぐに気持ちを切り替え、雪男が読む手紙に集中した。











【降魔剣】とは明王陀羅尼宗の本尊として伝わる魔剣であり、またの名を【倶利伽羅クリカラ】という。
150年程前に【不浄王】を倒すのに使用され、剣に【枷僂羅カルラ】と呼ばれる火の悪魔を降ろし、その火の力によって倒したとされる。

以後、明陀宗は代々に渡りこの剣を本尊とし、残った右目を封印して俗世から遠ざけるのを固い掟とした。

それを奪いに来た獅郎は突然倒れ気絶してしまう。
何故かは知らないが重傷を負っており、悩んだ末に達磨は寺に連れて帰り治療を施した。

その後、彼の持ち物から正十字騎士團の者だと分かり目覚めた獅郎に事情を聞くと…ただ、上司命令で来ただけであり、【降魔剣で子供を殺すのだろう】と口にした。

怒る達磨に帰れと言われても諦めない彼は、この寺の異変に気付き多くの人々を治療し始める。
誰もが内心、諦めていたところに希望が見え始め皆が指示されるがまま動いていく。

何年も苦しめてきた病魔はその日の内に解決し、妻である虎子や腹の子も助かった。
感謝する達磨に獅郎は再び降魔剣を要求。
もちろん、断るが彼はやはり諦めない。

そんな彼を捕まえようと達磨の父は仲間と共に襲いに来る。
達磨は追われている人物は賊ではなく恩人なのだと訴えるも…父は聞く耳を持たず【掟】を守ることを優先した。

そんな父親に幻滅したのか…獅郎と出会い考えが変わったのか達磨はその場を去り、獅郎を逃がし降魔剣を手渡したのだ。










それから数カ月後に青の夜が起こり、父親は秘密を明かし亡くなった。

その秘密とは…代々座主が枷僂羅を使役し、対価として【秘密】を求める。

【枷僂羅の存在】【何の為に使役されるのか】
その真を封印し秘密にする事で生まれる【嘘や疑心】を枷僂羅は喰らうのだ。

この契約により座主は不浄王を封じる火を手に入れる。
何故、そのような力が必要かというと…未だに御堂の地下に不浄王は封じられているからだ。


……倒されてなどいなかった。















まさかの事実に皆が驚愕し、嫌な汗が流れ始める。
何よりも現在、敵はその不浄王の両目を手にしているのだ。
今の話の流れで不浄王の目が揃うとどうなるか嫌でも分かってしまう。

最後には、燐にその不浄王を降魔剣を使って倒して欲しいと記されていた。
とんでもない内容にシュラは喉を鳴らして笑うが…顔は引きつっている。

(敵の目的が不浄王の復活……多くの人の命を奪いたいのか……それとも何か別の目的があるのでしょうか)


納得がいかないのかソラは敵の目的が他にあるのではと勘ぐっていた。
それが当たっていたと知るのは…もう少し先である。

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