尾を振る犬はうてぬ(だいぶ癒えたな・・・) 殺生丸は己の傷の具合を確認し、本来の姿から人型に変化する。人型の方が妖力を抑えることができ、消耗が減るからだ。 なにより狗の姿は目立ちすぎる。 ‡ 参 ‡ ちなみに蓮子は今いなかった。先ほど急に音もなく出ていったのだ。 (この臭いは、鳥か・・・) 恐らくは鳥の気配を目敏く気取り、狩りにいったのだろう。今は他に脅威になりそうな生き物も近くにいないので、おそらく『今日のメシ』とやらにするつもりなのだろう。 ただの人間のくせに、猫のような奴だ、と思う。 「え?!」 ぼたぼた。彼女が戻ってきて、近づいているのは匂いでわかっていたが、なにかが落ちる音にそちらを見れば、やはり鳥を狩ってきたようだ。両手でもっていたのだろう、中途半端に上がった彼女の手の下にすでに血抜きされた二羽の鳥が転がっている。 「?」 せっかく獲った鳥を何故彼女が落としたのかわからなくて、殺生丸は眉を寄せた。 殺生丸にとってはどちらも自分の姿だったので、急に姿が変わることに相手が驚くということまで気が回らないのだ。 「わんちゃんが・・・美少女になった!」 「だれが女だ。」 「男だった! てか、しゃべった!」 蓮子はダブルでショックだった。線の細い色白美人なので女性かと思ったら、ハスキーな声が出てきてびっくりした。 しかし、なるほど、毛並みのよい銀の髪に、マフラーのようなモコモコした毛皮は大狗の面影があった。 「鳩とってきたんだけど食べれる?」 あっさりと、殺生丸の変化を受け入れつつ、食料を差し出すが、すぐに顔を反らされる。 「・・・人間ごときの施しなど受けん。」 「猪くったじゃねーか。」 無意識の行動だったのだろうが、蓮子が捕ったものを食べるという意味ではすでに手遅れだろう。やはりツンデレ属性か、と思う。 「ねー、犬のおにーさんはなんていう名前なの。あたしは早乙女蓮子。世界一の武道家を目指してるの。」 (武道家・・・) なるほど。この娘の強さの理由が少しわかった。求道者とは思わなかったが。 「・・・人間に名乗る名などない。」 こんなに世話したのに。と、蓮子はうろんげな視線を送る。 「餌、とってきてやんねーぞ。」 「もとより頼んだ覚えはない。」 「まーかわいくないっ。」 あらまー。と呆れたようすだが、隣で胡座をかいてニコニコ笑う様は変化をする前と後とで変わらない。 なんだかそれに、とても毒気を抜かれてしまった。 女はいつでも殺せそうなくらい隙だらけだったが、なんとなく、彼女の存在を無視した。 (追い払うのも面倒くさい。ただそれだけだ・・・) やっと人型と遭遇できました。犬姿になると喋らなくなるのは仕様なんでしょうか。喋れるけど喋らないだけなのか。 ここでは夢主を警戒して犬のフリをしてましたが、少し気を許して人型になりました。その間夢主はずっと一人言を喋ってました。 管理人は殺生丸様の初登場姿を見て美少女だと思いました。犬夜叉に向かって「兄」と名乗ったときの衝撃よ。(殺生丸という名前はスルーしてた) 原作で犬夜叉が鳩を捕まえてたことがあったので、殺生丸様も鳩は食べれると思うのです。(食べんけど) (20/07/09) 前へ* 目次 #次へ ∴栞∴拍手 |