好きじゃない「りんにお土産だよ〜」 「わあ! ぶどうだぁ! 蓮ちゃん、ありがとう!!」 (いいな〜・・・) りんは瓜とか柿とか果物が好きだ。それをきいてから蓮子は狩りに行ったときに、ついでに見つけた果物をとってかえってくれるようになった。幼いりんは猪の肉とかよりもそっちを楽しみにしている節がある。 「今日はね〜、邪見にもあるんだよ。」 「へ?」 「邪見にも、はい。お土産。」 ぽん、と渡されたのは黒蜥蜴だった。自分の大好物である。しかし、黒蜥蜴は貴重なので、なかなか見つけることができない上に、それが好物であると邪見は蓮子に伝えた覚えはない。 「え? いいの?」 でも、なんでこれを? と、蓮子を見つめれば驚いた邪見に嬉しそうに笑っている。 「この間、それめちゃめちゃ追っかけてたでしょ? だから好きなのかなって思って・・・」 確かについ最近、見つけたはいいが捕まえることができなくて逃げられてしまったのだ。悔しさに地団駄を踏む自分を面白げに笑い飛ばしていたが、それを覚えていたのかと驚く。 「あれ? ちがった?」 「いや、あってるけど・・・」 「そ? ならよかった。」 そういってニコッと笑う蓮子に、邪見は複雑な想いを抱く。 (良い子・・・) 普段はおちゃらけた態度が多いが、まがりなりにもあの気難しい殺生丸に気に入られるくらいだ。蓮子はとても気立ての良い娘であった。 邪見がいつも小言や嫌味を言っても素直に聞き入れるし、落ち込んでいたら嬉しい言葉を投げ掛けてくれる。そして時にはこうして気が利いたことをしてくれる。相手が人間だろうと妖怪だろうと、この娘は同じように優しい。 (良い子なんじゃよなあ〜・・・) だからこそ、自分たちのような妖怪の側にいることが違和感でしかない。 妖怪の邪見としては、妖怪すなわち悪、というわけではない。ただ、妖怪は崇高な生き物、人間は下等な生き物、という概念があるだけに、人間に気安くされると違和感が生じるのだ。その概念は殺生丸も同じだったはずなのだが、嘘のように今ではその面影はない。否、蓮子とりんに対してだけ、全くない。 しかし、それは自分にも言えることなのだ。 でも、嫌いじゃない。 邪見と仲良くしたいけど、原作の邪見って人間ってだけで毛嫌いしてる印象なんですよね。高橋先生曰く、りんのことは少し情が移ってたらしいですけど、『少し』なのかとびっくりしました。なので我が家の邪見は夢主のことそんなに好きじゃないままでいようと思ってます。 ただ、殺生丸と仲良くするのってかなりおおらかじゃないと無理じゃね?って思ったので、夢主は強くて優しくて心がとてつもなく広い女の子になりました。 (23/07/01)仮タイトル『情が移る』 前へ* 目次 #次へ ∴栞∴拍手 |