あいのうた蓮子が舞を躍りながら、唄っている。それは月明かりのしたで会えない恋人に想いを募らせる恋歌だった。しかし、歌詞の切なさと対比して、唄う蓮子の表情は華やかな笑顔だった。 「あ、殺生丸。」 「お前の 「うん!」 にっこり笑って頷く蓮子はやはり、恋歌を唄っていたとは思えないほど明朗だ。 「ずいぶんと軽快な歌だな。」 「あー曲調?この時代の歌って暗いのばっかだもんねー。」 ぢうたっていうんだっけ?と蓮子がカラカラと笑う。 「郷に残してきた男でもいるのか?」 「へ?」 愛を謳う言葉を奏でておいて、本人はまったくの自覚がないようだった。かという殺生丸も、歌う彼女の表情から、とくに意味もなく唄っていたであろうことはわかってはいたのだが。 「あーそっか、歌詞がね。そうだね。うん、まあ、月が綺麗で思い出したから歌っただけなんだけどね。」 まったく予想を裏切らない回答だった。 「月と言えばさ。昔、いや、この時代からしたら未来になるんだけど。ある文学家がさ、『愛してる』って意味の異国の言葉を『月が綺麗ですね』って訳したんだって・・・」 ロマンチックだよねー。という蓮子の言葉の意味はやはり不明だ。 (わたしはここからうたうことしかできないけれど・・・) この夢主が生まれたばかりの初期に思い付いた話。連載タイトルの由来でもあります。 最初に描いた二人の距離感はこんなものでした。着かず離れず。自由きままに動き回る主人公を少し後ろから殺生丸が不思議そうに眺めてる感じ。 (21/03/20) アニメは今日で最終回ですが、どうなるのか楽しみです。 前へ* 目次 #次へ ∴栞∴拍手 |