儚き夢
命懸けの儀式1
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命懸けの儀式
廊下を歩いていた。
「走らないのか?」
「道がややこしいからな」
「そうですね」
「ねえ、教えてくれないかしら? あなた、ただの貴族ではないのでしょう?」
「そういう約束だったな」
レイトがアリアを呼んだ。
「なあ、姉さん」
「蒼天の間-あの場所-に行けばわかる」
「…………」
「ジュディス、先にあんたの答えを聞くよ」
「あなたはヨーデルやエステルの親戚で、満月の子の力がある」
「合ってるよ」
「そんであんたはアリアじゃなくてマリア」
これはユーリが言った。
「…………」
「おっさんとエステルとリタは気付いてたみたいだけどな」
「忘れるわけないわよ。この姉妹は!!」
「何? リタっちも被害者?」
「ちょっとレイヴン、聞き捨てならない言い方すんなよ」
「…………」
「あなたと長時間一緒に居たから使える理由は?」
「それが私の能力よ。
ユーリが使えたの知ってるでしょ?」
「……」
「魔導器無しでも使えるしな。
でも、正直な話、皮膚だのキスだのの粘膜の方が早いんだけど」
ユーリはあることを思い出した。
〔好きなんだよ、あんたが〕
(今思い出すと恥ずかしいことだな)
「うわっ」
「大きいのじゃ」
曲がり角を曲がると、重圧感漂う扉がそこにあった。
「さて、皆さん」
話し方が変わった。
「わたしの我が儘を聞いてくれてありがとうございます」
マリアは儚い笑みを零した。
「わたしのさいごの我が儘……聞いてくれますか?」
「何だ?」
「ここからはわたしの仕事です」
そう言うと壁に手をついた。ついた場所はへこみ、それがスイッチだったのか、上から格子が落ちてきた。
「マリア?」
「皆さんは地上へ上がってください」
「姉さん、何のマネだ」
「レイト、ユーリたちをよろしくお願いします」
「姉さん? …………まさか、姉さん!!
やめるんだ!! そんなことしたら!!」
「それは出来ない」
「どうして!!」
背を向けた。
「わたしが犯した罪だから……わたしなりの正義で断ち切りたいの」
扉を開けた先は暗く、澱んでいた。
ユーリたちにはそう見えた。