儚き夢
命懸けの儀式2
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牢屋を出て道に迷った。
やはり皇族なだけあって屋敷は広い。
「……これじゃキラに顔向け出来ないな」
数時間前――…
「ありがとう、出してくれて」
「あんたなら……あんたとユーリならアリアを止めれると思っただけだ」
「どういうことだい?」
「…………マリアが出ていってからアリアは変わったって、さっき言ったろ?」
「ああ」
「アリアが変わる前、先に変わったののはマリアだった」
意味がわからない。
どうして変わったなどと言うのか。
「マリアが家を出た原因、ランなんだ」
「お兄さん、だったかい?」
「ああ。アリアたちが騎士団にいた頃、よく一緒にいたんだ。アリアはランを見ていた。ランはマリアを見ていた。
マリアは誰を見ていたと思う?」
「……キラかい?」
キラは自嘲気味に笑った。
「それならどれだけよかったか」
「え?」
「ユーリだよ、ユーリ・ローウェル」
「ユーリを?」
「マリアは無意識だったけどな。マリアは自分のことは鈍感なくせに他人のことには鋭い奴だ。
アリアの想いなんて最初から見抜いていた。それであいつ、それで家を出たんだ」
「騎士団も辞めてな」と言った。
「マリアが辞めたことで、アリアは壊れた。
自分の所為でマリアが出ていったってな」
「…………」
「それから何年かして、最近になってマリアは帰ってきた。連れ戻された、が正しいけどな。
だが、そこにアリアは居なかった」
「どこに……居るんだい?」
「蒼天の間と呼ばれる儀式場だ」
「蒼天の間……何だ?」
「フレン、蒼天の間に行ってくれ」
「君はどうするんだ」
「オレには……オレたち三兄弟にはすることがあるんだ」
「やること?」
「大丈夫だ。きっと辿り着ける」
「…………」
そして今に至るというわけだ。
「キラに騙されたか?」
大体、どうして僕が行かなければならない?
キラやランが行けばいいだろう。
「……ここは……」
フレンは吹き抜けの広い場所に出た。
そこには一人の女性がいた。
「……だめ……これは私が壊すんだから。
そうしたらあの子は……」
何かを呟きいていた。
女は剣を大事そうに握り、抱きしめていた。
「何だ……これは……」
「ここは蒼天の間」
「!!」
振り向き、間合いを取った。
「ようこそ、フレン・シーフォさん」
「タチバナ・ニルギース……」
「事実と異なることばかりでさぞかし驚いたでしょうね」
「これはどういうことですか」
「これは彼女が望んだことです」
「アリアが?」
「気付いたのですか」
「ええ」
「マリアが出ていったのは私の所為だ。あの剣の核を壊せばマリアは帰ってくる。
アリアはずっと、ここにいるのです」
「違うでしょう?」
第三の声にタチバナは驚かなかった。