光闇繋者
刃毀れの刀1
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「煩いなあ」

「目立つなよ、彼誰」

「わかってる」

「すっごいねぇー。見たことない妖怪ばかりだ」

「そりゃ、ね」

「どいつもこいつも田舎くせぇ妖怪じゃねぇか」



刃毀れの刀



「ここ、建設中のビルだったんだけど……」

「いつ作ったの?」

「狸の妖怪なんだろ? どーせ、幻術か何かだろーよ」


 手を振る玉章に四国妖怪があらぶる。


「あれが大将? なんだ…ガキじゃーねーか」

「牛頭丸、今何を考えていた?」

「別に」


 牛頭丸はわたしたちに背を向ける。


「『隙あらばあの大将の首』」

「…って思っただろ!!」

「だめだからな。『密偵』なんだから、バレたら大変」


 実に楽しそうにわたしは言っていた。


「わーってるって」

「彼誰も楽しそうにしないでよ!」

「それは別にいいだろ。攻撃はしないんだから」

「……」


 この時馬頭丸は彼誰に不安を感じた。本当に大丈夫なのかな、と。


「痛っ〜」

「牛頭、大丈夫か?」


 頭を押さえているから一応は診る。


「肘か何かをぶつけたのか?」

「大丈夫だ、ほっとけ」

「そうはいかない」

「ほっとけよバカ!」

「誰がバカだドアホ!」


 拳で牛頭丸の頭を叩くと彼誰は呻いた。


「石頭」

「んだと!?」

「痛いんだよ、手が!」

「おめーら、見かけね〜つらだな…?」

「ワシらは四国から長い時間かけてきたが…」

「お前らみたいな奴…おったかな〜?」

「……さあ?」


 馬頭丸が馬の骨の上にある被り物を、前に持ってきた。


「じゃじゃあ〜ん!! 見事なり、我らの変装!! ホラ!! ボクら狸妖怪やけん!!」

「何!?」

「慣れん都会じゃ!! 人目が怖くて変装しとったんじゃ〜。ポンポコポンポコ」

「ほら!! お前さんらも!!」

「ポンポコポンポコ」

「む、無理です。こんな大勢……恥ずかしい」


 目薬を溜めた瞳を潤ませ、上目遣いでわたしは言う。それに牛頭丸と馬頭丸は誰だ、という目で見てくる。


「こいつは人見知りが激しいんだ。勘弁してくれ」


 四国の妖怪が狸なら仕方ない、と離れていくのを見計らい、牛頭丸は馬頭丸に聞いた。


「なあ、こいつってこんな奴だったか?」

「少し……ううん、大分勇ましい奴だったよ」

「しかし、牛鬼の言った通りにしたらうまくごまかせたな」

「それより暴れないでよ彼誰!」

「牛頭がバカと言うからだろう。……大丈夫だ、四国とは暴れないよ。それがあいつと牛鬼の命令なのだからな」
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