光闇繋者
歓声と自嘲1
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歓声と自嘲
学校には3限目くらいについた。なんとも中途半端だと思い、わたしは屋上でサボることにした。リクオには心配されたけど、実際には問題ない。そういえば何で黒羽が看てくれたんだろ。
「……眠」
やっぱ反動は来るか。
「やっぱ、陰陽術を使ったからかなぁ」
寝不足もあるんだろうけど。
「今の話、ホンマ?」
「え?」
屋上で仰向けで寝転がっていた時だ。
「彼誰さん、陰陽師なん?」
「ゆ、ゆらちゃん?」
厄介な奴に聞かれた気がするのは何故でしょうか。
「聞き間違いじゃないかな?」
「いいや、はっきり聞いたで」
「言ってない言ってない! それより授業に……」
「どうせサボりやろ? 彼誰さん」
ぎくっと体が強張る。
「でもちゃんが……」
「ええよ」
こいつ……面倒だな。
◇◆◇◆◇
じりじりとゆらは近づいてくる。
「聞かせてほしいなぁ」
「だから聞き間違いだって、きっと。わたしがそんなことできるわけないって」
「ずっと思っとたんやけど、作っとらん?」
「何を」
「本当の自分を隠す偽の自分」
その言葉に、何も言えない。過去を捨てたわけじゃないけど、過去を思い出したくないから今を取り繕った。それに偽りはなかった。
「なん、で……?」
「彼誰さん、あんたもしかして……」
「お前らー!」
バンッ!と勢いよく扉が開けられた。そこには担任である夜海がいた。
「よ、……読切先生!?」
「形無! 体調悪いのに何出歩いてんだ!」
「あー……そだっけ?」
「ってなわけで花開院さん、形無は保健室に連れていくから。お前も早いとこ教室に戻れよ」
「まだ話は……」
「また後でね」
夜海はわたしの腕を引っ張って屋上を出た。
腕を引かれてなされるがまま歩いた。
「らしくないな。あんなのに動揺するなんて」
振り返らず夜海は言った。
「最近、思い出したくないこと思い出してね」
おどけたふうに言うわたし。
「まだ話さないのか?」
「ごめんな。それはできない」
「そうか」
通る場所は特別教室が並ぶ。この場所では、今の時間、誰もいないから気にする必要はない。
「まだ……話せない。言ったらきっと……離れる」
泣くな。
悲しむな。
そんなもの、昔に捨てたはずだ。
「そんなことないだろ」
「そんなことわからない!!」
「――彼誰?」
「……ごめん。八つ当たりだ。先行ってて」
「彼誰!」
ただ、今を失いたくないだけなのに……
《素直になるのも時に必要だぞ?》
「いいよ、いまさら。嫌われ者はどこに行っても嫌われ者。同じことだよ」
《違うと思うがな。彼らは》
「……」
《だから主ももう少し素直なってみてはどうだ?》
「……これでも……素直になった方だよ」
呟きは誰にも聞かれることなく、空に消えた。