光闇繋者
千羽の神と袖モギ信仰1
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千羽の神と袖モギ信仰
「浮世絵町より璞町の各方面で、妖怪が暴れています」
「そう、お前を外にやってよかったよ」
「どうするのですか? やはり、総大将のことは若君に伝えた方がよろしいのでは?」
「いや。ここで若頭が仕切れないならそこまでの奴だったということだ。総大将のことは黙っておけ」
「また、信用を失いますよ?」
「いいさ。あいつがそれで成長するなら。お前はあの娘らを見張ってといて」
わたしの鳴き声が夜の騒がしい奴良組敷地内に響いた。
「彼誰?」
鵺の鳴き声が、不安を更に煽った。それを見兼ねたリクオが制した。
「妖…怪が!! おたおたすんじゃねー!!」
その言葉に、彼誰はふっと笑った。
「それらしくなったじゃないか、奴良リクオ」
彼はその場所から消えた。
風が、あいつが運んでくれる。今の状況を。そして、鳥居が死にかけていることを。
袖モギに袖を掴まれたが、呪いのかかる寸前で黒田坊が止めたのでまだ息はあるが、もって夜明け、と言っていたらしい
「袖モギは守り神殺し専門だと言っていたか。神社か寺か……そんなもの数え切れんほどあるぞ」
なら、妖気はわからなくとも妖怪と人の恐怖の違いくらいはわかるか、と目を閉じて索敵に集中した。
「……いた」
場所を特定すると、わたしの姿は消えた。
「すっかり空が白んできたな」
呟いてわたしは神社の鳥居の端を潜った。
「あらあら? もう決着ついた?」
見ると、袖モギの身体からは無数の刀、暗器の刃が出ていた。
「彼誰、どうかしたのか?」
「いや、……鳥居が袖モギに呪いをかけられたって聞いて」
「もう終わったぞ」
「……みたいだね」
千羽鶴の神……千羽……。
「頼む……助けてやってくれ……」
あの子はあいつの友達なんだ。