光闇繋者
逆臣の裁き1
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逆臣への裁き
総会でわたしは晩御飯を食っていた。いつもなら出ずに別で食べているはずだった。わたしがそこにいる理由。それは牛鬼のことだ。逆臣を止めなかった、という意味で呼ばれたのだ。
(何故わたしまで呼ばれなければならないのだ。牛鬼の問題なのだから我を呼ばなくてもよいではないか)
心の中で悪態とまではいかないが、愚痴を言いながら、わたしは箸を進める。
(リクオの出席で結構ざわついてるな)
「なんですかな? 今日の総会は」
無言の中、発言したのは一ツ目だった。
「私の知る理由なら、赤飯など出るはずもない」
「赤飯の理由はもち米が余っていたからだ。そこに文句を言うのは、作ってくれた人に対して礼儀がなってないな。好き嫌いではないのだから……」
「彼誰、やめねぇか」
「……はい」
敵を作るような言い方は気に入らないらしい。
「オレはねェ…組のためを思って言ってるのよ? ただでさえ西方の勢力に押されとるんじゃ。ここらでビシッとなー。弱体化はごめんじゃ!!」
「そうじゃ…。そこで組の強化のために、この総会で奴良リクオに正式に奴良組の跡目である『若頭』を襲名させる」
「ハ?」
「今までてきとーにしてきたがな…。よって、牛鬼の件及び、彼誰の黙秘をリクオに裁かせる!!」
これで、わたしと牛鬼の罪が決まる。
「ちょっと総大将…今さらリクオ様に何の期待をかけているのですか、ハハハ…」
「リクオ」
リクオの目付きが少し変わった。
「大安吉日のこのよき日に、奴良組総会にお集まりいただき恐悦至極に存じます。只今、紹介にあずかった奴良リクオでございます。このような高いところからで甚だ失礼致しますが、若頭のお役目、たしかに承りました。
今後――いかなることがございましてもこの盃、決してお返し致しません。しかしながら私、いまだ妖怪任侠道を修業中の繊弱なる駆け出しの弱輩者でございます。
その言葉や間違いや、皆様に失礼な言葉を申したる節はこのような次第でございますので何卒ご容赦頂きたく存じます」
「リ…リクオ………?」
皆、今のリクオに戸惑っている。わたしと牛鬼、ぬらりひょんと木魚達磨以外はざわついきはじめた。
「リクオ様…では、牛鬼の件を私から説明させてもらいます」
「うん」
「奴良組相談役の木魚達磨でございます。
先日、牛鬼はリクオ様のご学友を使い、自らの土地である捩目山におびき出し、そこで刃を向け、リクオ様を殺そうとした。また、すでに破門された旧鼠をあやつり、リクオ様に引退をせまる回状をまわさせようとした次第であります。また、形無彼誰はそれを知っていながら誰にも言わず、リクオ様を牛鬼の土地へと赴かせたのでございます」
何度目かのざわつきだった。
「リクオ様…処分を」
「うん。――おとがめなし!!」
リクオは『無罪』と書かれた紙を開いた。
「な…なんでじゃ!?」
「それほどのことをしといて!?」
「総大将!? こりゃーちょっとおかしーのと違いますかい!? リクオ様は何もわかってねぇ!! 若頭とか正気で言ってんですかい!?」
総大将は「何のこと?」みたいな顔をしている。関わらないって言ってるようなものだ。
「いーの!! ボクが決めたんだから!! ボクをきたえるためにやってくれたんだよ。ね、牛鬼!! 彼誰!! それに彼誰はボクや友達……牛鬼を助けてくれたんだよ?」
「一応友人だし」
わかってる。それはただの言い訳だってことも、バレていることも。