光闇繋者
酔いの目覚め
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酔いの目覚め



 何気ない放課後。リッくんを待っていたわけでもなく、ぼけーっと窓の外を見ていた。一応は護衛なのだけど、わたしはあまり、その任務をこなしてはいない。どちらかというと、学友という響きの方が正しい気がする。


「彼誰。用事終わらせてくるから、ちょっと待ってて」

「……ん」


 相槌を打ってうつ伏せる。


「だるい? 先帰る?」

「悪いけどそうする。ごめん」


 なんとなく、気持ち悪い。大したことはないのに、自分じゃどうしようもない。今日は眠れそうになくて、こういう時は、強制的に眠るために飲むしかない。
 日暮れ、わたしは良太猫の居酒屋に来た。夜に響かないように、と注意を受けて一人酒を始めた。妖怪でも人間でも、学校に行ってはいるけど、わたしは成人しているから普段は飲まないだけで酒は飲める。
 しばらく一人酒をしていると、化け猫たちが活気づいた。入り口を見るとリクオとカナがいた。驚いて目を見開くと、リクオがわたしに気づく。ぎくり、と肩を震わせて挙動不審になる。逃げる場所はないか、と視線を揺らすも逃げ場はない。


「は、はろー」


 悪あがきにもならない言葉を放つ。ああ、逃げたい。


「先に帰ったんじゃなかったのかい」

「……眠かったけど寝れないから」

「家で良かったんじゃねぇか」

「止められるじゃん。それより、なんでカナが一緒なの」

「嫉妬かい?」

「まさか。こんな場所に、か弱いお嬢さんを連れてきて、どういうつもりかなと」


 暗に妖怪の巣窟に何、人間を連れてきてるんだ、と言ってみる。
 リクオ自身は「それで嫉妬じゃねぇのか」と呟いていた。嫉妬って、カナに嫉妬することないじゃない。


「名前! なんて言うの?」

「……ヒスイ」

「ヒスイさん? 友達と同じ名前だぁ」

「……そう、なんだ」


 友人。人間のときにはいた友人も、わたしが人間ではないとわかった瞬間に離れていった。カナや巻、鳥居、清継、島。清継はわからないけど、みんな人間じゃないってわかったとき、離れていくのかな。あのときみたいに――


「おーす。って若様じゃねえの。それに彼誰に家長も」

「……夜海」

「読切先生?」

「おう」


 夜海はわたしの横に座って酒を頼む。


「お前ら。長居すんじゃねえぞ」

「……わたしは帰るよ。若様が来る前から飲んでたし」

「俺が来たばかりなんだが?」

「わたしは帰る! 勘定よろしく!」


 「お、おう」と戸惑いがちに良太猫は勘定をしてくれる。
 わたしは奴良組に帰り、風呂に入って眠りについた。

 不吉な影あることを、わたしたちはまだ気づかない。
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