光闇繋者
触れられたその手
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「あ、彼誰!」
「何? リッくん」
「買い物手伝ってくれないかな?」
「なんの?」
「いいから!」
手を引かれ、わたしは歩き出す。
触れられたその手
「は? 逃げてきたあ?」
「うん」
「奴良リクオから?」
「うん」
「なんで」
「なんでだろね」
重症だ、と夜海は言う。読切夜海。わたしの友人で四分の一、サトリの血を継いでいる。ついでに言うと、浮世絵中学校の教師でわたしやリッくんの担任、かつ清十字団の顧問だ。
「夜海、どうしよう」
「マジなのか?」
「うん」
「何でまた……」
「手を掴まれて振り解いて走った」
触ようとすれば、事あるごとに過剰反応していたの思い出した。
「ああ、それでか。触れるの苦手だもんな」
「うん」
わたしははあ、と溜め息をついた。
「大丈夫だろ。リクオだって怒ってないだろ。だから、帰って様子見て来いよ」
「……うん。ありがと、夜海」
「じゃあな」
「うん」
夜海の家を出てすぐ、リクオの部屋に行った。リクオに誘われたのが朝、何気に朝からずっと、夜海の家にいたからもう夕方だ。
「リッくん」
「彼誰?」
「朝はごめん。その……触られるの苦手で……」
「嫌われたんじゃないかって考えてた」
「え?」
リクオはわたしに近づいた。
「手を引くといきなり解かれて逃げるから」
「……嫌い……ではないから」
「うん、ありがとう」
バツが悪いからか照れたからなのか、わたしは顔を赤らめた。それにリクオは笑うだけだ。