光闇繋者
一番街の罠1
1/3
一番街の罠
顔が変わった旧鼠を見てカナは脅える。わたしは睨んでいるだけだ。
「か…顔が…化物ッ………」
長い夜の始まりだった。
路地裏に逃げるも、追い詰められ、逃げる術がなくなった。
「なに…? これ…? 彼誰ちゃん、ゆらちゃん……」
「妖怪変化…や。昼間…説明した通りよ。こいつらは…獣の妖怪」
「……え…?」
「おとなしくしてりゃあ…痛い目見なくてすむぜ」
旧鼠達は気味悪く笑う。
「ねずみふぜいが粋がるんちゃうわ」
「ねずみふぜいが粋がんじゃねえよ」
「何?」
「下がりな、カナ」
カナの腕を引き、後ろにやった。
「やれ、お前ら」
彼の下僕[しもべ]は一斉に来る。
「禹歩[ウホ]、天蓬[テンホウ]、天内[テンナイ]!! 天衝[テンショウ]、天輔天任[テンホニン]。乾坤元享利貞[ケンゴンコウリテイ]、出番や!! 私の式神!!」
式神か……さすが陰陽師というとこか。
「貪狼[たんろう]」
貪狼は宙に飛んだ。
戦線となった場所に血生臭い臭いが漂う。
「旧鼠さん、この女一体…」
「旧鼠か…。仔猫を喰う大ねずみの妖怪…。人にバケてこんな路上に出るなんて…」
「こいつぁ、三代目はそうとうな好き者だな…」
旧鼠がゆらに近付く。
「そんなぶっそうなモノはしまいなよ」
旧鼠がゆらに触れようとすると、ゆらは身を引いて手を弾いた。
「………あ?」
旧鼠は黙ってハンカチで手を拭いた。
「あぁ…」
「やべぇな…こいつ終わったわ」
ヒソヒソと旧鼠組の連中が話し出した。そして、旧鼠は指を鳴らした。
「いやっ…ネズミが!?」
「カナ!」
「ネズミはいくらでも増やせる。おとなしく…式神をしまえ」
ゆらが奴らに後ろを取られ、ネズミがカナの服の中に入る。
「もちろん、違う式神もだ。形無。お前も変なマネすんじゃねぇ」
式神を戻したのを見て旧鼠はゆらを殴った。……人質2人、はさすがにキツいな……。