光闇繋者
転校生
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転校生
たまに自分が自分に見えない時がある。どちらも自分で、どちらも違う存在なのに。
「君はわたし≠セよね?」
「何を今さら」
「君の本音は私≠フ本音」
「主の本音は我の本音」
「入り混じる時の本音はどちらの本音?」
「笑止。わたし≠フ本音」
ある夢の中の会話だった。
◇◆◇◆◇
朝、何やら騒がしい。
「何……どうしたの?」
「若がまた妖怪に変化して再び三代目になるって言ったんですって」
ああ、あれか。カラス天狗が言ったのか。
「へえ」
「興味無いの?」
「だってその現場に居たし」
「え」
「着いてっただけだよ。ほんと、ただそれだけ」
じゃ、行ってくる! そう言ってわたしは奴良組を出た。
学校の下駄箱前でリッくんとカナちゃん、清継がたむろしていた。
「おーすっ、どうしたんだ?」
「たしかに居たはずなんだ…。旧校舎には…ぼくが求めていた妖怪≠ェ!!」
清継がリッくんの身体を揺さ振り始めていた。
「え、どういう状況?」
「なのに! 気がついたら公園のベンチで寝てたんだ!! 奴良くん!! な、見たよね!! 妖怪!!」
「えぐう、ぐは…。し……知らないよぉ」
揺さぶられながら、リッくんは律儀に答える。清継は揺さ振り終わると少しは正気に戻ったみたいだ。そんな清継に氷麗が笑った。
「不良と見まちがえたんじゃないかしら? たむろしてた不良がおどかしたきたじゃない!?」
「おお、君は確か。そっ、そうだったかなぁ…」
「そーよ。アレ? もしかして気絶でもしちゃってたの? 情けないわぁ」
「そ、そんな……してないさ!! 気絶なんて!! あー、おぼえてるおぼえてる!! 不良ね…不良」
「そう簡単に学校に妖怪なんて出ないわよ!」
雪の正体を知ってると説得力ないよ。清継が離れたのを見ると彼女はリッくんに話し掛けた。
「あ、若!! 一人で勝手に登校しちゃ困ります! はい、母様のお手製弁当!! 彼誰の分も」
「どーも」
弁当を渡すと、リッくんは雪の襟を持って階段脇に行った。清継はまだいて、とりあえず弁明してみる。
「氷麗とは友達なんだ」
「べ、別に何も……!!」
「あの…ごめんなさい」
「はい」
「職員室はどこですか? 勝手がわからなくて」
「ああ…2階だよ、この棟の…」
「おおきに」
関西弁? 転校生かな。
「案内しようか?」
彼女は少し悩んで、お願いします、と言った。微妙に関西訛りがあったから、きっと西から来たのだろう。
学校が終わり家に帰ると異様に眠くて部屋で寝ていた。起きて階下に降りると、何やら宴会状態でリクオが怒っていた。何故はわからないけど。雪は雪で何か怯えている。
「どうしたの?」
「こっちは大変だったずっと寝てたからでしょ」
確かに22時は過ぎている。だがまあ……怒ることかな。寝ていただけだし。
「あー、うん、ごめん」
「日曜日空いてる?」
「うん? 何かあんの?」
「カナちゃんたちが家に来るから」
「……マジ?」
「うん」
「大丈夫なの?」
「何とかするよ」
「出来ることがあるなら手伝うからね」
リクオは目を細め、優しい笑みを浮かべた。