飴玉ボーダーライン | ナノ

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「なんで…?どうかしたんスか?」


部活やって額や頬を流れてた汗を手の甲で拭いながら、麻衣子っちに話し掛ける。他の奴が変なこと言う前に…。


「以前見に来ると言ったのに、なかなか来れないままだったので…。試験も終わったことですし、どうしても見せて頂きたかったんです」

「――…嬉しいっス!」

「頑張ってくださいね」


今なら100本中100本シュート決められる気がする。ジャンプボールやっても相手に指一本触れさせずに取れるかも。

見れば、麻衣子っちは荷物の入った鞄を持っていて、たぶんこの後はこのまま帰るんだろう。中に入ったらどうかと言ってみたけど、おかまいなくと断られた。

部活終わった後に途中まで一緒に帰ろうと提案しかけて止める。部活が終わるのはかなり遅い時間。それまで待たせるわけにはいかない。本人が気にしないとしても俺が嫌だ。



「そういや、麻衣子っちのおかげで補習受けずに済みそうっス!本当にありがとうございました」

「お役に立てたのならいいんですが…でもまだテストは終わったばかりなんですから、油断はできませんよ」


くすっと笑う麻衣子っち。確かに手応えと結果が必ずしも結び付くとは限らない、か。うーん、…結果が出たらまた言おう。


ふと思うことあって後ろを振り返ると、さっき麻衣子っちのことを話してた連中は練習に戻っていた。彼女を俺のファンのひとりだと思ったのか、こちらを向く数人の顔には死ねと書かれているような気がした。
…が、無視だ無視。
こういう視線には慣れてるし。それに、麻衣子っちに気安く近付かないでくれるんならそれでいい。誰の彼女だ、なんてもっての他。




「黄瀬テメ、何サボってんだよ」

「いって!」


俺の背中を蹴るこの声の持ち主は見なくてもわかる。他でもない笠松先輩だ。
真後ろから蹴られたもんだから麻衣子っちに突っ込みそれになった。(もちろん踏みとどまったけど。)


「いきなりヒドいっスよ!」

「うるせぇ!」


問答無用!とばかりに蹴りが追加された。


「すみません、私が涼太さんを引き留めてしまったせいで…―――笠松さん?」

「…水谷?」

「え」


互いを認識して名前を呼び合うふたり。
…何このふたり知り合い?


「なんで水谷がここにいるんだ?」

「涼太さんがバスケ部だと聞いたので、見学させて頂きたくて…。その…、笠松さんも、バスケ部だったんですね」

「ああ。見学は構わない。なんなら中に入れよ。荷物重いだろ?隅の方に置いていいぞ」

「お気になさらず。少ししたら帰るつもりなので」

「そうか…」

「笠松さんにまたお会いできて嬉しいです」


俺のことをすっかり忘れてしまったかのように普通に会話する麻衣子っちと笠松先輩を眺める。
え、てか麻衣子っち笑ってる…?
“また”ってどゆこと?






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