飴玉ボーダーライン | ナノ

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あーマジで楽しい。ボールが手に吸い付くような感じも、シュートが入ったときのスカっとする感じも。ほんの一週間ちょっとできなかっただけなのに、ずいぶん久しぶりのような感覚。

黙々とメニューをこなしながら周りをぐるりと見回してみても、みんな俺と同じらしくて。



「黄瀬ー」

「?」

「お前言ってたよな?お前のファンは試合の時くらいしか来ないって」

「そのハズだけど…何?」


さっきも話してた奴がまた話し掛けてきた。あ、こいつ俺が蹴られた時真っ先に逃げた奴だ。


「だったら、練習見に来る女の子ってお前のファンじゃないってことだよなっっ!」

「………は?」


一体何の話でそんなに熱くなってるわけ?
ポカンとする俺をよそに、目の前でその不思議な会話は続く。


「誰かの彼女とか?」

「いや俺じゃない」

「俺でもない」

「先輩は……確かほとんど全員フリーのはずだよな」


真面目に部活やってる先輩達を見て小声で…って、いや失礼だろ。てかお前らも真面目にやれよ。



「なぁお前声かけてみろよ」

「何て言えばいいかわかんねぇ。お前が行けよ」

「じゃあ俺行ってみようかなー」


「――…ちょっと、一体何の話してんスか」


地味に盛り上がるヤロー共に訊いてみると、ひとりが「ん」と体育館の入り口辺りを指差した。それにならって俺もそっちに顔を向ける。…あれ?


「な、あの子可愛いよな」

「………麻衣子っち」

「あの子のこと知ってんのか?」



自分に向けられた質問には答えずに、真っ直ぐそこへ向かう。


入り口のとこで少しおどおどした様子の麻衣子っちは、近付いてきた俺を捉えて、安心したようににっこり微笑んだ。


「練習、見に来ちゃいました」






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