抜き友宣言。2
単純な兄貴の事だから、井上のこんな冗談を聞いたら…。
「い…井上君…っ」
案の定。
やっと金縛りが解けたらしい兄貴が、突然井上の手をガッシリと握って、とんでもない事を言い出した。
「あの…渉って、鬼畜風味の調教プレイとか大好きだから、色々大変だと思うけど、これからも付き合ってやってね。…照れ屋で口は悪いけど、ホントはイイ奴なんだ」
「…調教好き!?」
――…何故ここで俺の趣味嗜好までバラす必要があるんだ。
隠し持っていたAVを兄貴に発見されてしまった事が今頃になって悔やまれる。
「イヤ、兄貴、俺は…」
「いいんだ、渉」
“ちゃんと分かってるから”と言わんばかりの兄貴の顔を見た瞬間、もう何を言っても無駄なんだと俺は悟った。
「…それが男子校ライフの慣習なら、従うしかないもんな…。変な心配してごめん。井上君みたいなしっかりしたイイ抜き友ができてよかったな。俺も安心したよ。じゃ…もう、帰るから」
「…あ…うん……」
何やら微妙な笑顔で井上にペコッと頭を下げて、パタパタと小走りに校舎を去っていく兄貴の小さな背中。
それを見ていた井上がボソッと呟いた。
「…すげー…マジで信じたな」
「――お前…何考えてんだよ!?」
「つーか松崎、そんな澄ました顔して実は鬼畜風味の調教プレイ好きだったのか!」
「うるせー!お前のせいで兄貴は俺を変態扱いじゃねーか!どーしてくれるんだ!?」
「んー。マジで抜き友なっちゃう?」
「ならねーよ!もう黙れっ」
あの単純な兄貴と、このいい加減な同室者によって平穏な人生を見事なまでに乱されて。
自分が今後どうなってしまうのかひたすら心配せずにはいられない、十六歳の春だった。
◇◆◇
おまけ。
その日の夜。
「弟君の学校はどうだった?」
「色々あって、ソッコーで帰って来ちゃいました。寮に潜入しようと思ってせっかく制服まで買ったのに…」
「よしっ、じゃあ今夜は制服プレイするぞ!松崎、もっかい着ろ!」
「えぇーっ!もしやそれがお目当て!?」
制服代、実は仲山が半分負担してます…という裏話。
end.
◇◆◇
もはや意味が分かりません。その場のノリだけで書いてしまいました。
自分は仲山主任ラブでも、弟の身はしっかり心配する松崎。兄貴心は複雑ですね。
渉の今後がどうなるのかは市ノ瀬にも分かりません…。前途多難っぽい気もします。
苦労人風味の松崎弟を、よければ応援してあげて下さいm(_ _)m
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