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イッた直後の倦怠感に包まれながらぼんやりと今までの色々な事を思い出していたら、後始末を終えた長谷がベッドに戻り、俺の隣に潜り込んできた。
甘えるように身体を擦り寄せてきながら小さく囁く、いつもの言葉。
「好きです、寺田さん」
あの時も今も変わらず、長谷はいつも真っ直ぐに自分の思いをぶつけてくる。
その思いの半分でも、言葉で返してやれたらいいのに。
年とともに積み重なった経験はすっかり俺の心を固くしてしまっていた。
「…このオッサンマニアが…」
本当は誰よりも愛している。
だからこそ、この思いが長谷の負担になってほしくない。
その気になれば自分の足でどこへでも駆けて行ける若い牡の、枷にはなりたくなかった。
言葉にする事が出来ない分、俺は力を込めて長谷の身体を抱きしめる。
どこにも行くな。ここに居ろ。
この腕の中にいる間だけでも、俺の事だけを思って眠りについて欲しい。
うとうとと眠りに落ちつつある、年下の恋人を眺めながら。
こんな時間がずっと続けばいいと願い、俺も静かに瞳を閉じた。
end.
(2008.3.5)
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