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15



 マルコが来て、三日目。
 本日は俺のバイトが入っている。
 問題はマルコをどうするか、だ。
 俺は、向かいで朝食を取っているマルコを見た。
 今日は目玉焼きとトーストだ。
 マルコのトーストには甘そうなジャムがのっていて、既にその口周りはべたべたに汚れている。
 牛乳を入れてやった青い記名済みコップには、まだ半分が残っていた。
 まだここに来て少ししか経っていないし、何より小さなマルコを一人にして留守番なんてさせるわけにもいかない。
 大泣きをしていた初日のマルコを思い出して、それだけは強く思う。

「……んー」

 小さく唸りながら、コーヒーを軽くすする。
 親父とお袋と一緒に事故に遭って、親父とお袋が死んでしまって、多額の保険金が俺の手元に残された。
 今までの貯金と保険金を合わせれば、多分、俺は仕事なんてしなくてもいい程度の資産は持っている。
 けれども、あえてバイトを辞めたりしようとは思っていない。
 家族においていかれて一人になってしまった俺は、呆然としながら、それでもどうにか退院して生活を立て直した。
 そして今度は会社に倒産された。
 泣きっ面へ蜂状態にやさぐれた俺がしばらく引きこもりになった時、心配したらしいお袋の友人に紹介されたのが、今のバイト先なのだ。
 それも、彼女が夫婦で切り盛りしている会社の事務方だった。
 週に三回でいいから顔を出してくれと言われているし、保育ルームもある。
 飛び入りも大丈夫だったはずだから、マルコを預けさせてもらっても問題はないはずだ。
 もしも問題なら理由を話して今日だけは早退させてもらって、マルコを仕事の間預かってくれるような保育所を別で探すことにしよう。

「……マルコ、着替えたら出かけるからな」

「おでかけよい?」

「今日は仕事があるんだ」

「ナマエ、おしごとよい?」

「そう」

 俺の言葉に不思議そうにしてから、マルコがわかったよいと頷く。
 それからまたもぐもぐとトーストをかじる様子に、食べ終わったら口元を拭かせようとティッシュをスタンバイさせて、俺も自分の分のトーストをかじった。





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