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10




 マルコの救助が来たのは、俺とマルコが好き好き言い合って俺が元の世界を諦めてから、7日後のことだった。
 その間に俺のキス暦は年齢を三周くらいした。
 マルコはキス魔だった。しかも年の功かなんだかしらないけどうまくて困った。ナメクジが気持ちいいとか聞いてない。
 それはともかく、マルコの救助が来た。
 そうしてその船を見て、俺は目を丸くした。
 白鯨をモチーフにした、とてつもなく大きな船と、はためく海賊旗。
 どう見てもそれは、白ひげ海賊団の船だったからだ。

「……白ひげ?」

「何だナマエ、オヤジは知ってたのかよい」

 大きく船へ両手を振って、迎えらしい小船が近づいてくるのを見ながら、マルコが言う。
 知っているも、何も無い。
 あの船は白ひげ海賊団の船なのか。
 急によみがえり始めた記憶は、前に読んだ漫画の内容だった。
 あまり繰り返し読まなくたって、泣いたところくらい覚えている。
 そうか。どこかで見たことがあると思ってたマルコは、あの時戦っていた白ひげ海賊団のうちの誰かだ。
 隊長格にそんな名前がいたことも、ぼんやり思い出した。

「……エース、は」

「エース?」

 俺が零した名前を聞いたマルコの反応は、俺がルフィやゾロの名前を出したときと同じだった。
 つまり、あの船にはまだエースは乗っていないのだ。
 だとすれば、まだまだ先かもしれない。
 けれどそれでもいつか、あの戦争が起こる。
 あの戦争が起きて、エースも白ひげも死んでしまう。
 ちらりと見やった先のマルコは、少し不思議そうな顔をしていた。
 どうしたのかと問いたげなその腕をがしりと掴んで、俺は眉間にしわを寄せる。

「……マルコ、俺、頑張る」

「ん? まァ、そんな気負わなくても大丈夫だよい。みんないい奴らだ」

 こんなときに限って俺の心を読めなかったらしいマルコは、にんまり笑ってそう言った。
 みんないい奴らなわけがあるか。ティーチの所為であの戦争は起きるんだ。
 まだあったことのない白ひげやエースが死んで、マルコが悲しんで嘆く日が、いつか来るのだ。
 だったら、俺がそれをどうにかしてやる。
 決意に燃えて白ひげの船を睨みつけた俺の横で、小船からおーいと声を掛けられたマルコが、両手を軽く振ってそれに応えていた。







 俺は、今までに無いくらい、やる気に満ち溢れてたんだ。
 だから、まるで予想もしてなかった。


「……あの島でのことは、もう忘れろい」


 そんな風に、言われるなんて。



end

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