01


「奴らはこっちに逃げたぞ!」
「追え!!」

早朝の静けさを破るように、けたたましい怒声が響く。
逃げる攘夷志士を追い掛け、真選組一番隊は新しく出来た大型ショッピングモールへ突入した。

身軽な沖田は誰よりも早く先陣を切る。
ショッピングモールの中心部に来た所で、犬や猫達が数匹走っているのを見かけた。それからすぐにペットショップの看板が目に入り、沖田は迷わず中へ入って行く。

「いい加減観念しやがれ」

残った動物達が何事かと騒ぎ立てる中、誰かが息を殺しながら潜んでいる気配を感じた。

沖田が刀を抜く。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

その時、がむしゃらに物を投げつけながら、男が沖田に向かってきた。
ビンやら小箱やら、飛んで来る物を狭い空間の中で巧みに避けながら、沖田は躊躇いなく男を斬り付ける。
その時、壁にぶつかり割れたビンから零れた液体が、沖田の頭に降り掛かった。

「……冷てェ」

甘い臭いが充満する。
事切れた男を見下ろしながら、沖田は甘い匂いを放つ液体を拭った。





男の亡骸を隊士達に任せて、沖田はペットショップから外へ出た。
土方が、狼狽えている天人らしき青年と一緒に、沖田の傍に来る。
土方によれば、青年はペットショップの店員で、騒ぎを聞いて駆けつけて来たらしい。

「犬猫が何匹か逃げちまった」
「戻って来ねーだろうな。てか、お前すんげぇ甘い匂いしてんな」

土方が顔を顰めながら鼻を押さえる。

「あっ、この匂いはまさか……」

青ざめる店員に訝しげな顔をすると、沖田の近くにいた隊士が後ろから抱きついてきた。
思いの外強い力だ。それに、荒い息遣いが湿っぽくて、物凄く気持ち悪い。

「ハァハァ、お、沖田隊長……!!」
「な、何だ?」
「オ、オレ、辛抱堪りませ…フゴオォォ!!」

隊士が地面に転がる。
鼻を押さえたまま、土方が気絶した隊士に片足を乗せた。

「変質者が紛れ込んでたのか?」
「これ、一応一番隊の隊士ですぜ」
「……動物愛液のせいかもしれません」

店員が顔を引きつらせながら呟いた。

「あい……なんなんだ、その卑猥なネーミングは」
「動物愛液は商品の名前です。僕、地球の動物好きが高じてペットショップでバイトを始めたのですが、なぜか地球の動物からは嫌われるタチでして」
「そりゃ難儀だな……」

悲しそうに話す天人は、体型もいかつく毛深い姿が何となく獣っぽい。確かに、ペットショップの動物たちからしてみれば、警戒してしまいそうな態をしていた。

「全く仕事にならないので、オーナーから動物愛液を頂いたんです。動物愛液には動物から好かれるフェロモンが入っているので、薄めて香水のように使っていました。確かにこの香りです」
「……そういやさっき、割れたビンに入ってたモンを被っちまった」
「それが総悟のこの匂いか。人間にも作用してるってことか?」
「はい、この香りの強さは、原液に近いです。……な、なんだか僕も……ハァハァ」

ゴツゴツした体の天人に、顔を赤らめながら熱の籠もった目で見つめられ、沖田はぶわっと鳥肌を立てた。

「総悟、風呂だ! 今すぐ風呂に入ってこい!!」

フラフラと沖田に向かって行こうとする店員を羽交い締めにしながら、土方が叫んだ。


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