【企画】歌刀戦記 | ナノ


ラハイラの罪 6  


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「スーロ?」

 その時、背後から声をかけられ、思わず背中がびくりとした。
 ――あーあ、見つかった。
 振り向いた先に居たのは、やはりユニだった。記憶の中と何ら変わらない姿で、どこも欠けたりしてないことに、とりあえずほっとする。
 しかし、あちらは違ったようだ。山吹色の瞳を大きく見開き、真っ白な顔して硬直している。
 ほらほら、ビビってるじゃん。だから嫌だったんだって。

「スーロ、だよな?」

 恐る恐る問いかけられ、視線をそらして頷く。
 そんな顔するなって。お前のせいじゃないよ。

「な……なんだ、思ったより元気そうじゃん。ビビらせやがって……」

 見るからにほっとした顔を見せた後、そう言ってユニが歩み寄ってきた。
 おっと、そこまで。
 手を挙げて止めた俺を、ユニは不満げに睨みつけた。
 俺はね、もうお前の相棒じゃないんだよ。
 そう仕草で伝えると、緩んだユニの頬が強張った。

「……なんなんだよ?」

 ひくひくと口元を震わせ、ユニがこぶしを握りしめる。
 あーあ怒った。本当、面倒くさいやつだなぁ。

「ふざけんなよ!」

 案の定、ユニは掴みかかってきた。病人の肩を激しく揺さぶって、周囲をぎょっとさせてることにも気付いていない。

「なぁ、嘘だよな? また俺のことからかってんだろ? そうはいくかよ。少し休んだら、また前みたいに二人で……」

 変わんないなぁ。お前のそういうとこ可愛いと思うけど、今回ばかりは笑えないよ。
 ドンと押し返すと、ユニは一瞬、泣き出しそうな顔をした。
 顔に巻いた包帯を緩め、潰れた左目を見せつける。
 自分でもちゃんと見てないけど、多分、酷い有様なんだろう。真っ青になったユニの表情が、正直にそれを物語っていた。
 俺はもうお前の力になれないし、これは恨みに任せて“鬼”になった、自分の罪の証なんだよ。
 お前の手を借りて復讐しようとした、愚かな俺への罰なんだよ。
 見開いたユニの目から、光る涙が零れ落ちる。
 力なくその場に座り込み、声を殺して泣き続けるユニを、
 俺は、ただ見つめることしかできなかった。

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