「スーロ?」
その時、背後から声をかけられ、思わず背中がびくりとした。
――あーあ、見つかった。
振り向いた先に居たのは、やはりユニだった。記憶の中と何ら変わらない姿で、どこも欠けたりしてないことに、とりあえずほっとする。
しかし、あちらは違ったようだ。山吹色の瞳を大きく見開き、真っ白な顔して硬直している。
ほらほら、ビビってるじゃん。だから嫌だったんだって。
「スーロ、だよな?」
恐る恐る問いかけられ、視線をそらして頷く。
そんな顔するなって。お前のせいじゃないよ。
「な……なんだ、思ったより元気そうじゃん。ビビらせやがって……」
見るからにほっとした顔を見せた後、そう言ってユニが歩み寄ってきた。
おっと、そこまで。
手を挙げて止めた俺を、ユニは不満げに睨みつけた。
俺はね、もうお前の相棒じゃないんだよ。
そう仕草で伝えると、緩んだユニの頬が強張った。
「……なんなんだよ?」
ひくひくと口元を震わせ、ユニがこぶしを握りしめる。
あーあ怒った。本当、面倒くさいやつだなぁ。
「ふざけんなよ!」
案の定、ユニは掴みかかってきた。病人の肩を激しく揺さぶって、周囲をぎょっとさせてることにも気付いていない。
「なぁ、嘘だよな? また俺のことからかってんだろ? そうはいくかよ。少し休んだら、また前みたいに二人で……」
変わんないなぁ。お前のそういうとこ可愛いと思うけど、今回ばかりは笑えないよ。
ドンと押し返すと、ユニは一瞬、泣き出しそうな顔をした。
顔に巻いた包帯を緩め、潰れた左目を見せつける。
自分でもちゃんと見てないけど、多分、酷い有様なんだろう。真っ青になったユニの表情が、正直にそれを物語っていた。
俺はもうお前の力になれないし、これは恨みに任せて“鬼”になった、自分の罪の証なんだよ。
お前の手を借りて復讐しようとした、愚かな俺への罰なんだよ。
見開いたユニの目から、光る涙が零れ落ちる。
力なくその場に座り込み、声を殺して泣き続けるユニを、
俺は、ただ見つめることしかできなかった。
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