Normal end.


花嫁の控室では、真っ白い華やかでありながらもシンプルなドレスに身を包んだ彼女が、青を基調とした小さないわゆるウェディングブーケというものを持ってボクを待っていた。

「あ、佐介さん。
よくお似合いです」

ふわり、と花が咲くような笑顔を見せた彼女はこちらへ静かに歩み寄った。

「ありがとう…君もよく似合っているな。
とても綺麗だ」

ありきたりな褒め言葉を並べる。
頬を染め恥じらう姿は本当に可憐だと思うが、心臓はいつもと変わらない速さで鼓動していた。

どうしても藤崎でないとボクは駄目なんだ…

先程思ったばかりのことをまた感じさせられる。
きっとこんな虚しいことばかりをずっと続けていくんだろう。

付き人に話し掛けられていた彼女はこちらを向き、会場へ向かいましょう、と当たり前のようにボクの腕に今は白い手袋で包まれた細い腕を絡ませて歩き出した。

連れられるようにボクも会場ヘ向かう。



先に会場内へ入り、十字架と神父の前で今度はボクが彼女を待つ。
自分の父と腕を組みゆっくりとした足取りでこちらヘ向かってくる花嫁。
ボクの隣に着き、誓いの言葉をつぶやいて、彼女の顔にかかっているベールを上へ持ち上げた。

ごめん、藤崎。

ボクは目を閉じてキスを−−−







何事もなく式は終わり、すぐに部屋へ戻る。
そして真っ先に藤崎がくれた手紙を読んだ。




読んでいる最中、何度も涙で前が見えなくなった。

せっかく藤崎がくれた手紙はくしゃくしゃで。


本当に自分の体の水分が全て涙になって流れ出てしまうんじゃないかというほど、ボクは泣き続けた。


ふじさき、
藤崎、

ゆうすけ
佑助、

ふじさきゆうすけ、
藤崎佑助。


何があっても藤崎だけが
過去のボクにとっても、
現在のボクにとっても、
未来のボクにとっても、
大切だって。

そんなこと今更だけど、何度だって思うよ。



誰より藤崎を愛してる−−−











『椿


たとえ手紙という形でも、最後のオレの気持ちを伝えることを許してほしい。


付き合い始めたとき、最初にお前言ったよな。
「ボクは将来女性と結婚して子供を作り病院を守らなければならないから、君とは短い付き合いになる」
どうだ?
結婚するまでって、長くなかったか?
もう付き合って5年だ。

少なくともオレには長かった。
だから余計だ、こんなにお前が愛おしいのは。

とにかくオレはお前が大好きで高校3年のとき告白した。
まさかオーケー貰えると思ってなくて、お前が真っ赤になって頷いてくれたときにみっともなく号泣したの、覚えてるか?

それから高校卒業して、同棲してさ。
毎日が幸せだった!
家に帰ったとき、インターホン鳴らさなくても椿がドア開けてくれるのは愛を感じたな…うん。
あと朝起きたら隣に椿がいるのも幸せだったし。
まぁ要するに椿がいればオレは幸せなんだけど。

とにかくオレは過去でも今でも未来でも、椿を愛してる。
何度だって言うよ。
本当に愛してる。

今までありがとう。


誰よりも椿が幸せになることを願って。


藤崎佑助』