俺が恋煩いとか、笑うだろ?




いつものように水谷と二人
土手に来て空いっぱいに
広がる星を見上げる

水谷が座ると私も隣に
そっと座る。いつもなら
水谷がへにゃりと笑って
今日なあー、と出来事を
楽しく話してくれるのだ


「・・・」
「みず、たに?」
「・・・どったのー?」


そっとして置こうと思った
けれど、やっぱり気になって
私から声をかけた。反応は遅
かったけど、へにゃり顔を見
せてくれた


「それはこっちのセリフ」
「んはは、そーだね」


力無く笑って空を見ずに
どこか違うところを見ていた
再び沈黙してしまう。その
空気になんだか寂しさを覚えた
水谷はどこへ行っちゃったの
心ここにあらず、今の水谷に
ぴったりの言葉だった


「俺が恋煩いとか、笑うだろ?」
「・・・笑わないよ」


先に口を開いたのは水谷で
いきなりとんでもないこと
を言うしとっさに出た言葉
にも、驚いた。同時に胸が
ちくりと痛んだ。ちくりと
したところをそっと触れる

次に言う言葉が詰まって
上手く言えない


「・・・」
「たぶん、向こうは
気づいてないんだよな」
「そう、なんだ」


ぽつりぽつり水谷が話す
ことを聞きたくないと思
ってしまった。でも水谷
には好きな人がいると知
った以上、応援しないと
いけない気がした。ここ
で私の感情を出したら
きっと水谷を困らせる
そう、思ったから


「水谷!私、応援するよ」


目一杯笑って見せた
心の中にある感情を
奥底に押し込めて
またちくりと痛む胸を
服ごとぎゅっとした


「あんがとー、」


広い星明かりの下に
水谷の声が響いた


私、明日から水谷の前
でちゃんと笑えるのだろうか



俺が恋煩いとか、笑うだろ?


110324.

title:確かに恋だった



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