おお振り(短編) | ナノ








背中まである長い
髪が風でなびく

成人式のために伸ばして
いた髪だけれど、昨日田島
が言っていたことが聞こえ
てしまいそれからは髪を短
くしたいなんて思ってしま
った。

だって、俺の好みは短くて
結ってるコなんて聞いたら
今まで伸ばしてきた髪なん
かいらない。田島と一緒に
いれるのも一年もないし、
切ってしまおうと決めた私
は美容室で大量な私の髪が
落ちて行くのを見ていた。

髪を切り終わった私は
商店街を歩いて田島の
家の近くを通る


「あれ?!」
「あ、田島」


ちょうど田島が犬を散歩
してるところに出くわした
目を見開いてお前、髪!!
とびっくりしていた。
田島の声に犬が吠える


「切っちまったのか」
「うん」
「綺麗だったけどな!」


ニカっとお日様みたいに笑い
綺麗なんて初めて言われた
から嬉しかったけれど、今
はもうないから少し寂しか
ったりして。髪切らなかっ
た方が良かったかなと髪に
触る。


「でも、短いのも好きだな!」
「たっ!」
「た?」


田島が私の髪に触れて
反射的に声が出てしま
って、かあっと顔が熱
くなる。何も知らない
田島はまだ、私の髪を
触っている


「似合ってんよ!」
「あ、りがとっ」


嬉しくて、嬉しすぎて
頭がパニックになる
今、私どんな顔してる
のだろう。緩んでいたら
恥ずかしいなあと、手で
抑えた


「どーした?」
「なんでもないっ」


いつの間にか田島とその
犬が私の目の前でじゃれ
ていた。

ねえ、田島が言っていた
好みの髪型に少しでも近
づいたのかな私。と心の
中で目の前の田島に問い
てみる。
田島の変わりに犬がワン
と吠えた。




ショートヘアー

(近づきたくて、)
(きみ好みの髪型にしたの)

20110515.







prev next