おお振り(短編) | ナノ







大学の帰り、日の当たる駅のホーム
で汗を拭いながら電車を待つ。


「あちいー・・・」


ずっとこんなとこいられっか・・・
自販機でスポドリを買って飲み干して
いると、ワンピースを身にまとった
小柄な女がコチラを見て目を見開いた


「・・・え、たかや?」
「・・・?」
「わかんない?私!」
「・・・あ、」


一瞬誰だか分からなかった。
3年も見ないうちにとんでもなく綺麗
になっていたから。目の前の女、いや
女性というべきか、間違いなく高校の
時に同じクラスだったやつだ。


「久しぶりだね!たかや今大学生?」
「おう。お前は?」
「仕事帰りなの。」


綺麗な顔がぱっと高校の時の無邪気さ
溢れる可愛らしい笑顔に懐かしさを覚えた。
つか、綺麗な顔してその笑顔とか
やべーな。


「ふーん。なんの仕事してんの?」
「今は花関係の仕事してて、ブライダルの
アシスタントやってるんだ。」


仕事が充実しているみたいで、今の
俺には遠い存在なんだなと、ちょっと
学生と社会人の差に嫉妬した。


「そっか、頑張ってんだな。」
「まあね、隆也は相変わらず大学
でも野球やってんの?」
「もちろん、キャッチャーばりばり」
「いいね!今度試合応援にいこーっと」


そんな話をしていたらやっと電車が
来て二人して乗り込む。そういや、
話していた時暑さ忘れてたな。


「来てもあちーだけだろ?」
「いいのいいの、隆也見に行くんだもん」
「・・・好きにしな」


ふへへ、ありがとうと嬉しそうに言うと
コイツは携帯を取り出し俺にアドレスを
聞いた。



とりあえず、アドレス交換しとこうよ!


(今度、二人で飲みにでも行くか。)

20120720.







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