おお振り(短編) | ナノ








誰にだって一つや二つ気になること
がある。俺は今その気になるヤツが
目の前の席にいる。


「なあ、一日眼鏡してて疲れねえの?」
「ん?慣れればヘーキだよ」


本を読んでいた例のヤツが顔をあげ
にこりと笑って首を傾げた。


「たまには取ったらいーじゃん?」
「それはダメー」
「なんで?」
「ダメなものはダメだよ阿部くん」


さっきよりにこーっと笑い、まるで
俺にこれ以上聞くなと訴えているよう。
黙り込む俺に、ヤツの眼鏡がきらんと
光る。思わず目を細め、ひらめいた。
これだ!


「あのさ、お前の眼鏡反射して眩しいから外せよ」
「そっか、ごめんね!」
「・・・」


眼鏡を取ると思いきや、クイっと眼鏡の位置
調整し、読んでいる本で顔を隠した。


「これなら大丈夫だよね」
「・・・まあな」
「よかったー」
「てかさそれ逆に目に悪くない?」


確かにね!と笑うヤツに俺はこいつ
の素顔なんかどーでもよくなってしまった。



眼鏡少女


(眼鏡をとったら更に)
(可愛いんだよなきっと)

20120519.







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