おお振り(短編) | ナノ








3月に埼玉から東京へ出てきて
一か月が経ち、仕事にもやっと
少しだけれど慣れてきた頃一通
の手紙が届いた。

私に手紙なんて珍しい。今どき
はメールで済ましてしまうから。
しかももっと珍しいというか驚き
なのがまっ白い封筒に泉孝介と
書かれていること。


「こうすけから・・・?」


孝介から手紙なんて初めて貰った。
さっそくその封筒を丁寧に切って、
便箋を読むと仕事は慣れたか?うまく
いってるか?懐かしい写真でも見て
俺たちを思い出して、仕事元気に頑
張れよ!お前らしさを忘れんな!!
そんな言葉たちを何度も繰り返し読み
返すと胸が熱くなってしまい、気づい
たら孝介に電話をかけていた。


「もしもし。どした?」
「ううん、なんでもないの。ただ声
が聞きたくなっただけ。」
「んだよ、それ。なんかあった?」
「ううん。・・・バカ。」


小さく言ったのに孝介には聞こえて
いたようで、バカとはなんだよ!
とかなんとか電話越しに色々聞こえて
くる。手紙であんなこと書くなんて、
ずるい。会いたくなっちゃうじゃない。
我慢してたのに。


「なんか、言えよ。」
「・・・ありがとう。」
「・・・バーカ。」


バカとはなによ!そう言って私は思い
きり電話を切ると、机にしまってあった
便箋を取り出し、孝介宛ての手紙に想い
を綴り始めた。



ラブレターをもう一度。


(孝介、大好き。)

20120414.








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