おお振り(短編) | ナノ








小さい時、俺の後をずっと追い
かけていた女の子を思い出した。
いつも隆也、隆也って笑ってい
て良く転んでいた。名前は思い
出せない。今、どこで何をして
いるのか…俺のこと覚えている
のかも分からない。

忘れられてたら、少しというか
結構キツイけどな。


「コラ、隆也。何ボケっとしてるの」
「…お前かよ」
「私で悪かったわねー」


フンとむくれるコイツは近所に
住んでいるお節介で面倒なクラス
メイト。何かあると、絶対コイツ
がとんできて世話を焼く。ま、嫌い
じゃないんだけど。


「はは、お前は相変わらず阿部にくっついてんなー」
「だよな、珍しいよな。」


水谷と花井が苦笑う。
コイツの表情を伺うと、頬を染めて
嬉しそうに笑った。


「いいの、好きでやってんだから!」
「お前いい嫁になるよ」
「本当?花井ありがとー」
「もう、くっついちゃえば?」


水谷、余計なことを…
イライラするのを抑えて、
落ち着こうと目を閉じる。


「ふへへ、だよね。隆也と私お似合いでしょー?」
「いいと思うぜ」


花井後で覚えてろよ。
花井に怒りを覚えつつ
コイツが言っていたお似合いでしょ。
に懐かしさを感じた。

そういやあの小さい時にも
女の子供に同じことを言われた。
コイツの顔を見つめて、まさかな
と目をそらす。

あの子は、もっと可愛いげが
あったよな。と思い返す俺は
何故だか、胸がうるさかった



お似合いでしょ


(隆也はいつ私に気づくかな)
(私は、ここよ。)

20110828.







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