ふと目を覚ますと愛らしい瞳が目の前にあった。しきりに小首を傾げこちらを覗き込む存在に、長い睫毛を震わせ笑みを漏らす。

「ふふ、おはよう……起こしてくれたの?」

金の髪を散らしてベッドに横たわったまま、小さな来訪者の頭を撫でてやれば、短く返事をした来訪者はむずかるように両翼を羽ばたかせてみせた。明るい色合いの羽根が午後の日差しを受けてきらきらと輝きを放ち、健康的な美しさを見せつけるそれはしかし寝起きの目には少々まぶしかった。
ソファーでは銀の髪を垂らした男が、読みかけの書物を腹に載せ寝入っている。かくいう自分も、頭の横に開きっぱなしの本を置いている。どうやら二人して読書の最中に眠ってしまったらしい。常に開け放してある窓から入り込む風のおかげで、見知らぬページが開かれている。

「でもちょっと早すぎたかな」

まだ眠気は覚めない。のらりくらりと脳が歌う。耳元で鳴るページを繰る音は子守歌には最適である。
金色は来訪者の背中を撫でつけ、もう一度瞼を落とした。金糸を啄むくちばしは、再度彼を目覚めさせることはできなかった。



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