※「傍観者」×ダイヤのA。「傍観者」側は高校生設定
※夢主はdiaの原作知識無
※not雲雀恋人








一目見た瞬間から奪われた。
ふとした時に思い浮かんでは思考を占めて、あの凜とした姿が脳裏に焼き付いて離れない。

深海を彷彿とさせる髪にサファイアの如き瑕のない輝きを放つ瞳。
女子にしては低めの声は波を思わせるように静かで。
幼き頃に読んだ童話に出て来た姫君のように繊細で美しい顔(かんばせ)は、雪のように溶けて消えてしまいそうな儚さを孕んでいた。

まるで完成された絵画のような美に言葉を失い、そして次第に頬は熱を帯びる。


「名字名前。これからよろしく」


響く声が頭の中をこだまし、その名が深く刻み込まれた。









「坊やが一目惚れねぇ」

「……煩い」


揶揄する響きに成宮が睨むも効果はなく。

普段の我儘王子っぷりの激しい成宮が一人の少女に翻弄されている様子が可笑しくて堪らないのだろう。
カルロスはニヤニヤと楽しそうな笑みすら浮かべている。

自主練後の片付け中だからこそ許される雑談の中で話題を占めたのほ成宮の一目惚れの相手、転入生のことだった。


「美人って噂の転入生だろ?クラスの奴がざわついてた」

「あぁ、確かに休み時間とか人集りすげぇよな。美人過ぎて近寄り難いとも聞いたけど」

「……」


間違いなくその一人に含まれる成宮はムスッと表情を歪ませる。
仕方ないことだと、そもそも彼女の何でもない自分に権利がないとわかっていても気に食わない気分に陥っていた。


「おい、あれ。噂の転入生じゃねぇか?」

「え!?」


表情を一転、バッと顔を上げて指先の示す方へ向く。

陽が陰り始めたためにわかりにくいが違いない。
青を揺らしながら歩くその凜とした佇まいは彼女だった。


「何でこんな時間に……?」


確か部活には入ってなかったはずだ。

疑問を抱える成宮を他所に他の面々は顔を見合わせる。
言葉もなく揃って頷き、ニヤリと笑みを浮かべて一人が成宮の肩に手を置いた。

半分はからかいと、そしてもう半分は純粋に応援する気持ちから。
少しぐらい背中を押すぐらいはしてやろうと誰となく思い至る。


「俺、アイスな」

「菓子。あと炭酸系」

「俺は……」

「ちょっと待て!いきなり何!?」


唐突な、しかも勘違いでなければパシろうとしてないか。
抗議の声を上げれば彼らは一斉に姿が見えなくなりかけた彼女を視線で指す。


「“コンビニ行くついでに”送ってやれよ。クラスメイトなんだし、言い訳は立つだろ」

「……!!」


言葉の意味を理解するが否や、持っていたものを彼らに放り投げて走り出したのは言うまでもない。