※「傍観者」×名探偵コナン。「傍観者」側は数年後
※夢主はコナンの原作知識無
※コナン原作改変、捏造有







「――納得いかない、そんな顔だね」


感情の起伏があまり感じられない声。
その声の主は青い髪を揺らし同色の瞳を細め、ソファに身を沈めたまま冷めた眼差しを向けていた。


「……当たり前だろ。俺は探偵だ。しかも奴らは俺が追っていたのにどうして外されなきゃなんねぇんだよ」

「探偵、ね」


彼女が溜め息を吐くように呟くとますます目の前の子供の視線が強くなる。

そう、子供だ。
親の庇護を受ける子供ということは、たとえ本来の姿を取り戻したところで変わらない。

そのことをわかっているのだろうか。……いや、わかっていないかと彼女は思う。


「探偵だから何?戦力にならない人を加えるほど私も愚かじゃないんだけど」

「戦力にならない、だと……!?」

「探偵はあくまで暴く人。真実を白日の下に明らかにする役目であって犯罪者を捕まえるのは含まれてない。探偵ができる仕事はないから引っ込んでろって言ってんだけどわからない?」


江戸川コナン……基、工藤新一。
高校生探偵だった彼は組織に首を突っ込んだせいで小学生になってしまった、被害者の一人。
下手に探偵としてのプライドが高い分、子供だからを理由とせずに探偵の領分ではないと押し切ってしまう。

事実、もう彼ができることはなく、後は直接叩くしか残ってないのだから。


「……お前にはできるのかよ、マデイラ」


『マデイラ』。それはポルトガルのマデイラ島で作られる酒精強化ワインの名で彼女に与えられたコードネーム。
情報収集・操作に長けた能力を買われて幹部入りしたことは周知されており、華奢で人形のような容姿はとてもじゃないが荒事が得意なようには見えないだろう。

彼女を組織に送り込んだ彼らが知れば苦笑いするしかない評価だ。
ひと度戦闘になれば彼女に敵う者はそういないというのが彼らの共通認識だった。
頭脳も戦闘面もトップクラス。だからこそ正体が露見することなく、一人で組織へと潜入が可能と判断されていた。

彼女としてもコナンの指摘は心外の評価で、敵組織を壊滅させる点には問題なく。
戦力外、邪魔だと説いても納得しないコナンを黙らせるために彼女は殺気を込めて言い放つ。


「アンタと一緒にしないでくれる。これでも裏社会で何年も過ごしてるわけ。一つの組織を相手して潰すぐらい簡単だっての」


コナンが悔しげに唇を噛み締めて。
この場に同席しながらも沈黙を守っていた人物がじっと自分を観察していたことを彼女……名前は視界の隅でしっかりと捉えていた。